人間は少し不真面目 〜映画『女の子よ死体と踊れ』レビュー〜
まあ、やっぱアイドル主演映画って難しいですよね。アイドルをメインに添える時点でその人数分だけ役を用意して、さらにキャラクターや見どころを分散させ、男性との絡みも迂闊に入れられないともなれば制約はかなり大きいはずですから。
『女の子よ死体と踊れ』という映画は主演であるゆるめるモ!というアイドルのコンセプト「みんなのハートをゆるめにきました!」を表現する上で作風や映像の方向性は間違ってないと思うし、「ファンタジックホラー」というジャンルもゆるめるモ!らしいゆるい感じで今までのアイドル映画と差別化をしようという意図も感じられました。
しかしどうしてもB級感というか、ハートをゆるめるにしてもどうにもチープな感じは否めませんでした。もちろんゆるめるモ!のメンバー自体はアイドルであって役者ではないから演技に関して評価は難しいし、監督の朝倉加葉子さんも本作で長編映画は2本目ということで脚本も映像も荒削りな印象を受けたのは事実です。
それでも僕が本作を推したい理由は、エンドロールにあるのです。箱庭の室内楽のハシダカズマ氏が作曲したシューゲ的浮遊感のあふれるギターサウンドに、小林愛氏が書く脱力感と喪失感のある詩が乗る新曲「人間は少し不真面目」にのせて、真っ白の衣装に身を包んだゆるめるモ!のメンバーが建物の屋上で踊るエンディング。このエンドロールの"エモさ"にゆるめるモ!というユニットの限りない魅力が詰まっていると思います。
誰かにだけ降り注ぐ悲しみ
私が選ばれたのは 神様が私に甘えているんだと思うのよ
この自分の不幸な境遇を無理に前向きにとらえる悲痛な歌詞は、彼女たちの曲らしくて僕はとても好きです。今までのゆるめるモ!は抱えたネガティヴィを、抱えたまま「どうでもいいじゃん」と笑い飛ばすアイドルでしたが最近は少し切な向き合い方をする詩も増えてきました。それはメンバーが確実に大人になる中で必然なのかもと思います。
この映画はゆるめるモ!が可愛くてポップなインディアイドルから、プロの人気アイドルとして大人になる、その瞬間を切り取った映画なのです。そしてその瞬間のカタルシスが詰め込まれたエンドロールに限りない"エモさ"があるのです。
思い出美化しないで
君を愛していたい
君は少し不真面目
人間はもっと不真面目
ゆるくて不真面目なアイドルが、「人間は不真面目」だと歌って踊ること。それってめっちゃ素敵だなと僕は思います。皆さんはどうでしょう。
K.すみす
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