一発やったら終わりか?「パンティストッキングのような空の下」

maezonoです。今日はうめさわしゅんの短編集「パンティストッキングのような空の下」について書きます、結論から言うと名作なので皆買いましょう。

身もフタもない言い方をしてしまうと、行く先のない思春期の若者の性欲が描かれた所謂ハミダシ者の物語であり、テーマとしてはありきたりなものかもしれません。しかし! このマンガがそれらありふれた青春物と明らかに違う点は性欲のその先、を描いている所です。まあ性欲というのは誰にでもあり、非常に難しいテーマなので僕も冷静になるべく、ひとまず去年発売された由愛可奈の「Rapist ~他人に性的関係を強いる女~」を視聴し、賢者モードに突入した状態でこの記事を書いています。

突然ですが、磯部涼さんという音楽ライターの書いた銀杏BOYZのインタビューにおいての発言を引用します。

ゴイステの“童貞ソー・ヤング”っていう青春パンクや童貞ブームを代表するような楽曲がありますよね。あれは、「一発 やるまで死ねるか!!!」って歌詞に耳を引かれがちですけど、実はその後の「一発 やったら死ねるか!!? 一発 やったら終わりか!!?」の方が重要だと思うんですよ。あの時点で、暗に、大人になったからといって幸せになれるわけじゃないんだぞ、むしろ、それからの方が苦しいんだぞっていうことが歌われていた。そして、『光のなかに~』はまさにそれを突き詰めたアルバムなんじゃないかと。

「パンティストッキングのような空の下」にも同じことが言えます。この話に出てくる若者は性欲に翻弄されて行くけれどもその先にはどこを走っても他人と向き合わねばならず、果てにあるのは虚しさと悲しさ。

きっと人が 人がひとりでいられるんなら何の問題もないんだろう

その先にある「他人と向きあう」ということの可能性と瑞々しさが全力で描かれており、これは他の青春漫画には無い点だと思っております。

首都圏に31店舗を誇る角海老グループというソープランドがあります。一度行ったことがあるのですが、店員と客と性欲以外は徹底的に排除されています。入店時は接客相手の女性が来るまでは風呂とシャワーとベッドが詰め込まれた6畳ほどの全てがシステム化された個室で待たされますし、店を出る時は表の入口とは別の出口から出るように指示され、あるようで無いのかのような他人の存在。妙に遊郭を意識させるような純和風の過剰なまで(と、そこにあるパワフルな存在感)の内装とそこに不釣り合いな洋楽のヒットチューン。テイラー・スウィフトもこんな極東の狂った内装の風俗店で自分の曲が鳴っているなんて知ったらどう思うだろうか。パンクシーよりも難解なアートだと思うだろうか。そういう「他人」のことを考えるだけでもすごく可笑しい。湯冷めしそうな冬の帰路の中でそんなことを考えました。

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過剰な自意識にもがく日本語曲DJ

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