私なりの空腹の技法論


 

お世辞にも満足にご飯が食べられる経済状況ではなかった。当時バンドに夢中になっていた私はバンドや音楽の事ばかり考えて毎日を過ごしていたから、バイトをする事すらなんだか億劫に感じていたし、少しでもお金が出来ればCDを買い、バンドのための機材を購入し、練習スタジオにも通いっぱなしだった。

そんな生活を続けていては、お金が尽きていく事は必然だったが、自分ではそれを嫌いになれなかった。むしろ楽しんでいた。

だからこそ、楽しい生活を構成しているCDや機材は意地でも売りたくないし、それらを売り払うのは魂を売る事だと思っていたし、音楽へ使うお金を削らずに、食費を削る事でなんとか毎日をやり過ごすしかなかった。

今回はそんな生活の中で思ったことを書く事にする。

  • 素パスタ

さて、自炊をすれば食費も安く済むと言うが私は料理が出来ないし、お米を炊くことも億劫だと思っていたので、よくある定番の貧乏飯「冷凍したお米に駄菓子を載せて食べる」事すらしなかった。その代わりに、当時の私はとにかくパスタを食べていた。

パスタの調理法を極シンプルに説明するなら、

  1. パスタの麺をゆでる
  2. パスタにあわせる具材の準備をする
  3. 麺と具材を合わせる。

このような流れだろうか。正直、味や具材にこだわらなければ誰にでも出来る。

しかし、私は何か具材を買うお金もなく、麺だけのパスタ(=素パスタ)をずっと食べていた。

最初は食べたものを戻してしまいそうになるほど辛かったが、ある程度続けているとそこまで辛くもなくなってきて「なんとも奥ゆかしい塩気があって、それが良い」と謎の納得感に包まれていくから人間とは不思議なものである。

この生活が慣れてくると、私はさらに調子づいてしまい、また趣味にお金をつぎ込むようになってしまっていた。

  • 概念飯

そんな中、当時の貧乏仲間のRが私にこう言った。

「最近、気づいたんだが、『食事』という概念は、満腹、栄養、咀嚼この3要素から成り立っている。これらを満たせば食事として問題ないのであれば、同時に摂取しなくても、一つ一つ分けても問題ないのではないか。」

 「満腹は水道水をがぶがぶ飲んでいればなんとかなるし、栄養はD○Cのサプリでも1日1錠飲み、咀嚼は大丈夫、ずっとガムを噛めばいいのだ!」

当時の私は、彼の慧眼に感動し、早速実践してみたのであった。

うーん、しかし何をどう考えても冷静な判断が出来ていないあたり、自分は体も心も弱っていたのだろうと思う。この食事という概念を分解して食べる食事概念飯、あらゆる貧乏飯の中でもなかなかにお粗末な発想である。

概念飯を取りながら過ごしてみて1日目、2日目は問題なく過ごせたが、3日目の朝、無気力とだる気で私は全くベッドから動けなくなり、揃えていた大好きなMy Bloody ValentineのCD(紙ジャケ)を泣く泣く売り払って食事をとる事になった。

ロック少年だった自分がロックのCDを売って飯を食うなんて悲劇的/喜劇的なんだろうと思し、今となっては笑い話だが、当時は本当に泣くほど自分が情けなく、やりきれない思いで胸がいっぱいだった。

  • 私なりの「空腹の技法」

ここからはフランクに話していこうと思います。

さて、この空腹と芸術の関係性について、もしかしたら、カフカの「断食芸人」を思い出す方もいるかもしれませんね。

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変身・断食芸人 (岩波文庫) /フランツ・カフカ(著)

(ちなみに未読の方へ、 岩波文庫版だと、不朽の名作「変身」とセットになっています。両者ともにさくっと読めますが、めちゃくちゃ味わい深いですよ。さらに話を脱線させると最新の新訳版では「変身」でザムザは毒虫にならないらしいですが、素晴らしい意訳で評判が良いらしいです。)

皆さんが(特にクリエイティブな)文化活動をする上で、カフカの断食芸人は、参考の一つにになると思うし、そもそもすごく面白いので、オススメです。

 

文化的活動と生活のバランスの取り方、ひいては芸術や文化、趣味との付き合い方については、例えば音楽メディアに限って言っても、「レコード、CD、mp3データなどのメディアの違い」「新品購入、中古での購入、レンタル、貸し借りなどの入手手段の違い」などの様々な視点に立つことが出来ます。

それぞれについて皆さんも思う所があるだろうし、私も個人的な見解はありますが、ここで述べる事を避けます。正解なんてないし、各々が一番正しいと思うことをやる事が一番大切だと思います。

ですが、これはとても大切なテーマなので、一度ゆっくり考えたり、本を読んでみたり、もしくは誰かと(特に立場が全然違う人と)話し合ってみると、きっとすごく色々な事に気づくことが出来ると思います。

そこで自分がそのままの意見でも、意見を変えても、学んだり、考えたりする事で、人生がより深みを増していくのかもしれないなぁ、とそんな風に思ったのでした。

うーんっていうかそもそも

かっこつけないでバイトしろ!!!って話ですよね。(結果、めっちゃしました・・・)

 

 

とはいえ、上記の生活だけでは、そんなに生活が苦しくなる事もないと思われる方も少なくないと思いますし、実際、その通りです。

では当時の私が何をしていたのかといえば

メイド喫茶にハマっていた んですね・・・

その時の話はまたいつか、機会があれば。