コルセット姿から繰り出される破壊的チェロサウンド―Rasputina


l_10bd6f0dc573b99327536d6a297dd177

 

はとです。

チェロ奏者を中心に編成されたオルタナティブ・ロック バンド Rasputina(ラスプティナ)。このバンドをご存知の方には90年代インダストリアル・ロックなどを経由している方が多いのではないかと推測します。チェロといえば、ギターやベースに相当するパートをすべてチェロでカバーしているヘヴィ・メタル バンドApocalypticaが有名でしょうか。(個人的にはチェロをフィーチャーしたヴィジュアル系バンドriceの往年の作品も連想します……) しかし、90年代においてApocalypticaに先駆け結成・オリジナル作品の発表をしたのがRasputinaなのです。

1989年、バンドの中心人物である女性チェロ奏者のメローラ・クリーガーはヴィレッジ・ヴォイス誌上に、チェロバンドを結成すべく“electric cellists wanted”と女性のチェロ奏者を求める広告を打ち出しました。その後1991年にRasputinaを結成します。その形態はメローラを含めた3名の女性チェリストたちにサポート・ドラムを加えたものでした。

 


 

■歪むチェロ、コルセット、卓越したヴォーカリゼーション

“electric cellists”を求めていたことからも伺えますが、なんといってもこのバンドにおける最大の特徴はチェロに大胆に施されたディストーション・エフェクト。その質感は非常にノイジー。ずっしりと芯があり大味なパワフルさを持ちながら、曲線的な音運びと太いロングトーンを可能とするところはギターでは再現しがたいでしょう。また、彼女らを語る上でヴィジュアルやパフォーマンスも外せない要素です。現在に至るまでメンバーチェンジを繰り返され編成の違いもありますが、結成当時から一貫しているのはステージ衣装にゴシック調のドレスやコルセットを身に纏っている点です。チェロという古楽器に誂えたかのような衣装、足元にはディストーション・ペダル。クラシカルなスタイルの演奏技法から一転して突然破壊的なサウンドが繰り出される光景は圧巻です。

そして、このバンドを最後に成立させているのはヴォーカル・ワークではないかと思います。アイコンとも言うべきチェロの存在にまったく引けをとらないメローラの歌声は瑞々しく、安定したピッチで豊かなビブラートを効かせ、クラシカルな感触はチェロのアンサンブルに自然に馴染みます。Rasputinaがチェロを扱った物珍しいだけのロック・バンドではないことは、優秀なヴォーカルパフォーマンスにも起因していると言えるでしょう。

 

■ゴシック/インダストリアルからクラシカル/トラッド・フォークまで

その音楽性に目を向けてみると、96年のデビュー・アルバム「Thanks for the Ether」からゴシック/耽美なスタイルを披露していましたが、2作目にあたるクリス・ヴレナ(ex.Nine Inch Nails) プロデュースの「How We Quit The Forest (邦題:森の迷宮)」はひとつの本領を発揮した作品です。実は唯一日本盤がリリースされているのがこの2ndアルバムで、この作品だけ知っているという方も少なくないと思われます。クリスによる影響の大きさが伺え、インダストリアル音楽作品として捉えてもユニークな仕上がりで、前作からのクオリティの向上が見られます。

当時はマリリン・マンソンのツアーへの同行、またマンソン、トゥイギーによるリミックス・トラックの発表などもありました。

“The Olde Headboard” / “How We Quit The Forest” (1998年) 収録

 

ゴシック/インダストリアル/エレクトロなどに象徴される90?00年代作品を経て、その中で何度かのメンバーチェンジを繰り返しながら、2007年発表のアルバム「Oh Perlious World」でもう一つの極地に到達したと感じます。プログラミングやメタルパーカッションなどによる硬質で無機質な趣は鳴りを潜め、よりクラシカルでありながら、お馴染みであるチェロの歪みはダイナミックなミックスにより楽器本来の生々しい重厚さが表現されました。往年の作品に見られたギミカルなトラックから一変し、チェロを主体としながらもクラシカルな手法で様々な伝統楽器の音を緻密に積み重ねています。生ドラムを含んだインプロのような肉体的なアプローチがされていると同時に、ボーカル作品としてもメロディセンスが洗練された傑作的一枚。

 

“Choose Me For Champion” / “Oh Perilous World” (2007) 収録

 

 

■チェロ奏者としてのメローラ・クリーガー

余談ですが、メローラのことを遡ると古くはNirvanaとも関わりがあります。1994年の”In Utero”の最終ワールドツアーにおけるヨーロッパ公演でバンドメンバーとして参加していました。また、当時NirvanaがイタリアのTV番組に出演した際に披露されたステージでも共演しており、その貴重な映像がyoutube上で確認できます。

1993年 イタリア RAI television 2曲目の「Dumb」にてチェロを演奏するメローラの姿が確認できる

 

 


 

それではまた次回。

 

<参考>

・Rasputina (band)From Wikipedia, the free encyclopedia

・ラスプティナの妖しく美しいチェロが奏でる、秘められた暗黒のアメリカ史

鳩田 誠司

鳩田 誠司

ヴィジュアル系バンドとガールズ・ラブ作品への嗜好に傾倒後、失業。近年労働に復帰しました。
鳩田 誠司

Tags: