天国じゃ労働の話をするんだ【我もまたアルカディアにあり/江波光則】

かそりんです。ここ最近は寒暖の差が激しく体調を崩しやすい気候が続いていますが、9月になっていよいよ涼しく過ごしやすい時期です。かそりんは暑いと手汗がビチョビチョ出るので、これからは紙の本が読みやすくなるいい季節です。

というわけで今日は本の話。【我もまたアルカディアにあり/江波光則】です。

Hayakawa Online

あらすじ

「我々は世界の終末に備えています」
そう主張する団体により建造されたアルカディアマンション。そこでは働かずとも生活が保障され、ただ娯楽を消費すればいいと言うが……
創作のために体の一部を削ぎ落とした男の旅路「クロージング・タイム」、大気汚染下でバイクに乗りたい男と彼に片思いをする不器用な少女の物語「ラヴィン・ユー」など、鬼才が繊細な筆致で問いかける、,閉塞した天国と開放的な煉獄での終末のかたち。(Hayakawa Onlineより)
あらすじ書いておいて急にかそりんの話になりますけど、僕はできるなら働かないで生きていきたいです。労働が嫌で嫌でたまりません。大学生だった頃は友人と一緒に将来のビジョンが見えなさすぎて卒業した瞬間にサラサラと砂のように風に消えていくんじゃないかと話していましたが、実際のところ体重は減りましたが労働からは逃れられていません。いつか実現してほしい誰もが働かなくていい世界(別に僕だけが働かなくてよければそれでいいですが)は未だ到来していません。

「我もまたアルカディアにあり」は、その誰もが働かなくていい理想の世界がどうやって実現していったのか、その過程を「御園」という不思議な一族の視点から語らせる、終末SFです。終末SF、エモーショナルな響きですね。大気汚染が進むアルカディアマンションの外でバイクに乗りたいと願う若者の話、アルカディアマンション建設作業中の事故で首から下の機能を失った建設作業員の話、創作のために余計な体の機能を削ぎ落としていった作家の話、アルカディアマンションに自らの意志で入居しなかった者達のコミュニティで作られた生物兵器の話…働かずとも生きていけるアルカディアマンションでどうやって生きていくか、それぞれのエピソードで彼らは自分が生きる道を探していきます。

もちろんこの一冊だけでも楽しめますが、江波光則の過去作品と共通するイメージである同調圧力からの脱出やアイデンティティの確立、宗教、破れ鍋に綴じ蓋的出会いなどなどが集まった江波イズムの盛り合わせとして読むのも味わい深いでしょう。ボンクラとしては「ディス・ランド・イズ・ユア・ランド」における破壊兵器描写が高得点です。

秋の夜長に、もうそこまで来ているかもしれない未来の天国と地獄でどう生きるか…考えてみるのもひとつ、いいんじゃないでしょうか。

かそりん

かそりん

趣味はマジック:ザ・ギャザリングと小説。好きなアニメはプリパラとマイリトルポニー。福島県から東京都に引っ越しました。
かそりん

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