【創造的人生の残り時間】vol.2 井上まさや(ベーシスト)

井上まさや君という男は、わがままカレッジを始めとした様々なバンドで活動するベーシストであり、現在は下北沢ERAのブッキングも務める、そう、僕と同じ歳の中では東京のインディーシーンにおける重要人物の一人で……と、肩書きを並べるのは本質ではなく、彼の魅力はフロントマンを支えるライブでの存在感であり、MCで魅せるファンキーさであり、色んな人から必要とされる人柄である、と思う。そんな井上君の「創造的人生の残り時間」について聞きました。

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―ERAのブッキング始めて……半年だっけ?
井上「そうだね。9月。」
―やってみてどう?
井上「とりあえずやってみたいな、っていうのもあって、最初はブッキングだけどちょっと狙い過ぎてやろうとしちゃったことがあって。」
―狙い過ぎたってのはそれはコンセプト的な?
井上「そうそう。もうイベントを……俺が入ったからには、俺が独自に組めるようなライブを作りたいな、みたいに思ってやるんだけど。やっぱり、こう、始めたてでっていうのもわからないけど、そんなポンポンとバンドが『いいっすねー、やりましょう!』みたいに決まらないこともあるわけで。そういう時、ホント早い話なんだけど、『やべえ、これ続けるの大丈夫かな?』って(笑)。あと売上も大丈夫かな?とか、色んなこと考えてやらないといけないっていうのを、改めて知って。」
―じゃあやっぱ、今一番大変な所はそういう所と言うか、自分にとって一番いい感じの所を見つける、力み過ぎちゃうみたいな。
井上「うん。最初力み過ぎてて。でも、先輩だったり店長だったりも暖かく見守ってくれる感じで。」
―やりがいはやっぱりある?
井上「めちゃめちゃある。やっぱり若いバンドの子とかが、出てくれて、『今日楽しかったっす!』とか、『めっちゃ良いバンドとやれて嬉しいです!』ってのもあるし。終わった後打ち上げで話しながら、『こういう音楽好きなの?』みたいな話をしながら、こういうのもあるよー、って音楽かけて教えたりしてとか。『また呼んでください!』って言われると普通に嬉しいし。あと自分で呼んで初めて顔を合わせたバンド同士が意気投合して、そのバンドが次に自主で企画やる時に初めて会ったバンドを呼んだりとかってこともあって。その繋がりが生まれる瞬間を目の当たりにできて。それを作ろう!と思ってやってるわけではないんだけど、そういう瞬間があるのが、すごくいいなって思う。」
―少し前に話した時に、もともとやってた昼間のバイトを辞めて、ERAでブッキングを始めて、もちろんベーシストもやって、言ってしまうと、一日中音楽に触れている生活をしているわけじゃん。そういう生活について思う所ってある?「思う所」ってのも漠然としてるけど(笑)。
井上「あー、でも今聞いて確かにそうかも、って思ったくらい。あんまりそこまで意識してなかった。」
―例えば、僕は普段別の仕事していて、『音楽に関する仕事やりたいな』ってなるとやっぱ別方向から『好きを仕事にすると絶対嫌いになるよ』みたいな話が来るわけで。そういうのもない?
井上「うん……好きなことやりたいと思う。純粋に。」
―それはライブハウスのブッキングの仕事している時もそう?
井上「できてる。もちろん大変なこともあるけど。これで好きじゃない仕事だったらもっとキツいだろうなとか思ったり(笑)。」
―話は変わるけど、なんか最近ブッキングの仕事の中でオススメのバンドとかある?
井上「音の旅crew。最近出したCDがタワレコメンに選ばれたりしていて。一番最初に対バンで見た時は2年前なんだけど、その時はレゲエとかダブとか、でもロックしていて。ファンクとかそういう要素もあるし。アーシーだけどアーバンで。」


―今バンドやってる人でステージに上がりたい人がいれば井上君に問い合わせればOKみたいな所はある?
井上「全然もう。来て来て。」
―ノルマ抑えます、みたいな?(笑)
井上「まあ、それも全然やりますよ(笑)」
―そのノルマの話なんだけど、僕はDJやっていて、ノルマはあったりなかったりして。まあDJとバンドだとまた違う部分もあるだろうけど、ライブハウスのノルマシステムについてはどう思う?ポジティブな意味でもネガティブな意味でも。
井上「うーん……何て言ったらいいんだろう……良い面も悪い面もあるけど……難しいな……」
―うん、難しいよね、それは。バンドが最初に通る道って感じ?
井上「通り道とも思わないけど……例えば『10人呼んでください』って言われて、10人の前でライブやった方が絶対楽しいよっていう。」
―おお!
井上「例えば、25人呼んでくださいとかで、30人呼んだ、ライブやった、そうしたら超楽しいっていうのはあるし、ノルマなしで20人来てくれました、宣伝も何もしませんでした、それでも嬉しいかもしれないけど、ノルマが無かったとしても、宣伝頑張ってやって、30人40人増やせるよ、っていう所は……感じて欲しい、とも思わないけどね。でもやっぱり、皆がうまく回っていくためには仕方ないとは思う。」
―それって、やっぱりERAでブッキング始めてから変わった部分もある?
井上「うん、変わった。うまく回っていくためには仕方ない。でも、昔バンドやってた時……昔ってほどでもないけど、ノルマの分お客さん呼んだら、『お前らいつもお客さん呼んでくれるから、こういうイベントあるけど出てみる?』みたいなこともあったし。全然集客頑張ってないバンドとかは、やっぱりライブハウス側から見たら応援しづらいってのもあるし。お客さんを呼んでくれる=嬉しいってのも難しい所だけどね。」
―これでライブハウスのブッキングとしての質問は最後になるけど、バンドやっている人、特に小箱で頑張ってる人とかにアドバイスとかってある?
井上「色んなライブハウスに出てほしいと思います。」
―……その心は?
井上「自分の好きなライブハウスを見つけて欲しい。一番最初にバンドやってた時は、あんまり色んなライブハウスに出てなくて。と言うかライブの本数自体もあんまり多くなくて。それは月何本もバンバンノルマ背負ってでもやるよりは、月一回とかに絞って確実にお客さん呼んでいこうよみたいなスタイルで最初やってたんだけど、ノルマ払ってでも、色んなバンドに見てもらったり、ライブハウスの人に見てもらったりするのが、自分のその後組んだバンドとかでは、大きいなって部分があって。初めてのライブハウスとかで『ライブこの前見て、出て欲しいと思いました』みたいなこととか、色んなことがあると思うんだけど。」
―へぇー。それはあんまり気付かなかった所と言うか……
井上「色んなライブハウスに出て欲しい。単純に見てもらう間口が増えるし。」


―じゃあ、次はプレイヤーの井上くんについてなんだけど。
井上「すいませんでした~(笑)」
―(笑)。ベースっていつからやってるの?
井上「ちょうどこの間数えて。丸十年。2005年の5月。」
―2005年って言うと……高2?部活みたいな?
井上「いや、軽音部が無かったんだけど、クラス替えがあって。クラスメイトで楽器やってるよみたいな人たちがいて。音楽自体はちょっと聴く程度で、兄貴の影響が大きいんだけど。その当時、世代じゃないんだけど、BLANKEY JET CITYとか、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTとかが好きな連中がいて。俺も知ってたから、『あれカッコイイよね』みたいな感じで話してたら、『ベースやってみてよ』って話になって。そのギターやってた人が、親父のベースあるから貸してあげるよってなって、5月に自転車で取りに行った(笑)」
―イイ話だね。
井上「兄貴がギター弾いてたから、ギターはやらなくてもいいかなって。」
―その兄弟は当時どんな音楽聴いてたの?
井上「まあNUMBER GIRLとか、洋楽だったらRadioheadとか。レッチリも聴いてたけど、Sonic Youthとか。」
―自分たち世代だとその時のロックだと……アジカンとか銀杏BOYZとかは?
井上「うん、普通に聴いてた。中学生の時からずっとTHE BACK HORNが好きで。その友達にも貸したりして。」
―その当時の友達って今もまだ繋がりあったりする?
井上「あるある。」
―全然ある?
井上「うん。ドラムが去年結婚して、たまに飲むし。ギターは今MUSQISってバンドでギタリストやってて。」
―へぇー。で、今やってるバンドを一言ずつ紹介してもらっていい?4つだよね?
井上「正式なメンバーが2つ。」
―まず、わがままカレッジから。どんなバンド?
井上「自分の中で、でいい?バンドの紹介なのか、俺の中の位置付けなのかっていう……」
―あー、そうだね……
井上「俺はP-FUNKだと思ってやってる。わがままカレッジは。」
―えー!?(笑)まあ自分の中ってよりは……両方聞きたいけど、とりあえずバンドの紹介で。
井上「まあ、楽しい至上主義かな、わがままカレッジは。」
―なるほど。じゃあMISTAKESは?
井上「MISTAKESは何だろう……カッコイイ音楽をカッコよくやってるバンド。」
No Gimmick Classicsは?
井上「うーん……LOW HIGH WHO?で唯一いるロックバンド。GOMESS君のタワレコインストアのオープニングアクトとかもやったり。それでライブ見てたら『おはよう日本』で俺がカメラにピンで抜かれることがあって(笑)。前のバイト先で『あなたラップとか聴きに行くの?』っておばちゃんに言われて。なんすか?って聞いたら『おはよう日本』出てたよって。」

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AKOGAREは?
井上「ロックンロールエンターテイメント。」
―それぞれのバンドで、音楽性が違うわけじゃん。その中で切り替えみたいのってどうしてる?
井上「MISTAKESはプレイヤーとしてやってる感じ。もうベーシストとして。わがままカレッジとかは、楽しく魅せる。ショーだね。どうやって楽しく盛り上げて行こうかみたいなことを考える。AKOGAREもそうかな。あんまりまだライブはやってないんだけど。でもAKOGAREのメンバーはわがままカレッジが好きで、いてくれてると思うんだけど(笑)、それを見て、ベース弾いてほしいって言ってもらえて。そういう部分を買ってくれてると思うから、同じくいかに楽しませようかっていう。」


―凄いと思うのは、その4つ以外にも例えばトーニャハーディングさんのサポートやったりとかしてるじゃん。なんか、そういう色んな人に必要とされてることについて……っていうのは俯瞰的に見てと言うか、そういうマルチなプレーヤーになると思ってなかった?」
井上「思ってなかった。やっぱわがままカレッジの初ライブの時に見に来てくれた、WINDOWSってバンドの原田くんが、『めっちゃよかったからさ、こんどウチでも弾いてよ』って言ってくれて、そこからプレーヤーとして、色んなバンドに出入りするのが始まって。それまでは2年くらいやってた前のバンドだけだったんだけど。」
―ほんと考えもしなかったみたいな。
井上「うん、今は色んな所でベース弾いて嬉しいし、楽しい(笑)」
―なんか、井上くんの役割って、わがままカレッジとかMISTAKESのライブを実際に見て思ったんだけど、共通してるのは、MCで井上くんが何かやって、それを(わがままカレッジのボーカルの)山下くんがツッコむみたいな、フロントマンがツッコんで、それによってワッて盛り上がっていて。練習でもそんな感じ?ムードメーカー的な。
井上「うーん……色んな所に行って、そういうことを言ってもらえることはあったかもしれない。ムードメーカーじゃないけど、『まさやんがいたから今日は他のメンバーも楽しそうだったよ』みたいなこともあったり。」


―これからフロントマンとかでやっていきたい願望とかはある?他にチャレンジしてみたいこととか。
井上「あんまり考えてないかな……」
―さっきバンド始めた時は今みたいになるとは考えられなかったっていうのがあって。これから5年後とかのビジョンとかってある?
井上「まあ、バンドをやっていたいなっていう。」
―それは『音楽』じゃなくて『バンド』?
井上「いやー……まあどっちもやりたいよね。でも、もしベーシストとして色んな所で弾く仕事がたくさんあったとしても、自分のバンドはやっていたいかな……」
―このインタビューが『創造的人生の残り時間』って題で、まあ元ネタは『風立ちぬ』なんだけど。例えば、音楽活動を辞めます、ってなる時って考えたことある?
井上「あるけど、ホントに全然想像できない。」
―例えば、今後別の、ごく普通の仕事に就いたとしても、趣味として続けて行く、って感じもありえる?
井上「もちろんもちろん。」


―井上くんみたいに、色んな人とベーシストとして関わって、ライブハウスのブッキングとしても他のバンドマンと関わったら凄いあるのかもしれないけど、例えば大学卒業して就職するからバンド辞めますとか、結婚したから辞めますとか、わりとあるわけじゃん。特に僕らと同じ年代だと節目みたいな歳でもあるし。もちろんガンガン続けて行く人もたくさんいるけど、そういうことを横で見ていてさみしいとかある?
井上「さみしいのはもちろんそうだけど……何とも言えないな……」
―そこで、すごい弱気になったりとか、する?
井上「あー、昔、大学のサークルにベースとサックスがめちゃめちゃ巧い人がいて。こういう人がスタジオ仕事とかするんだろうな、とか思っていて、俺は大したことできないしな……ってなっていた所に、そいつが就職するって言ってて。じゃあやっぱ俺も就職した方がいいのかな?って思って。」
―え、じゃあ就職活動はしたことあるの?
井上「うん、ある。」
―あ、そうなんだ!それはどのくらいと言うか……
井上「1か月くらいかな(笑)。でもそれでもキツくて。悩んでいた時に友達と話してたら、最初にやってたバンドのメンバーがじゃあ、やろうよって。『俺はもともとずっと誘いたかったんだけど』みたいな感じで。そいつもやっぱり俺の中では、すごいミュージシャンだと思っていて。そいつが誘ってくれたから、なんかあるかも、って。俺にも何かできるかもって。一人じゃ無理かもしれないけど一緒に何かできるかもなって。そこで就活は止めて。だからそいつが声かけてくれなかったら今もバンドやってなかったかもしれない。」
―じゃあ最後の質問なんだけど、バンドが楽しいとか、バンドをやっていきたいとかあって。その中でベースを弾くっていうのは自分の中でどういうこと?
井上「うーん……まあ音楽的に言えば、良い音を、良い時に出せばいいだけなんだけど、自分たちがやりたいことをやって、それを楽しみに見に来てくれる人がいて。」
―それはじゃあ、やっぱり作品作りよりもライブの方重視?天秤にかけることではないけど。
井上「ライブは、肌で感じられる場所であると思うし、ライブは好き、そこが好きかな。」


【INFORMATION】

8/10(月)新宿red cloth
red cloth 12th ANNIVERSARY
開場 18:30 開演 19:00
前売 2000円+D 当日 2500円+D

8/15(土)心斎橋FANJ twice/Pangea/CLAPPER
ボイソニック2015
開場 12:30
前売 3000円(1D込み)

9/6(日)群馬・高崎club FLEEZ & Asile
ジグソウパズル vol.13
前売 2500円+D 高校生 2000円+D
(前週に開催するジグソウパズルvol.12との通し券 4000円+D)

7/22(水)新宿red cloth
奇天烈大発火!!-35分間の戦い-
開場 18:30 開演 19:00
前売 2000円+D 当日 2500円+D

8/12(月)新宿red cloth
red cloth 12th ANNIVERSARY
開場 18:30 開演 19:00
前売 2000円+D 当日 2500円+D

他、詳細は各バンドのWebサイトにて!

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過剰な自意識にもがく日本語曲DJ

http://djmaezono.com/
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