もがきはノスタルジックではない「ハルフウェイ」

日曜日担当のmaezonoです。先週の「20世紀ノスタルジア」と一緒に買ったDVDを紹介します。2009年の映画「ハルフウェイ」。監督は北川悦吏子。主演は北乃きい。

この映画、脚本と監督がもともとテレビドラマの脚本を数多く手がける北川悦吏子でプロデューサーは岩井俊二の名前があります。この辺り推測ですが、序盤のバスケットボールの試合~保健室のシーンに至る日の光の暖かさが出ているような映像を見ると編集にも結構関わっているのではないか……?と感じさせられます。「花とアリス」のようなものを期待すると肩透かしを食らいますが、あの映画が好きな人には間違いなくおすすめできる映画です。私は「花とアリス」はDVD版を所持していてブルーレイリマスター版が発売されたらそちらも発売日に買う程度には好きです。以下あらすじをWikipediaから。

小樽市の高校3年生・ヒロ(北乃きい)は、かねてから片思いをしていた相手のシュウ(岡田将生)から「付き合ってほしい」と告白される。札幌福祉大学(架空)に進学するヒロにシュウは早稲田大学に行くつもりでいることを話せないでいた。ヒロは「何で言わなかったの? 東京に行くのにあたしにコクって(告白して)どういうつもり?」と怒りを露わにして連絡拒否。シュウが担任教師の高梨(成宮寛貴)に相談して早稲田行きを止めると聞いてヒロは大喜び。しかし、書道の教師・平林(大沢たかお)に書道室で相談すると「衝動で考えるのが男だ」「生涯で考えると短い間だ」「渋谷は魔物だらけだぜ、でも、東京でいろいろ経験してきてから君を守りたいといわれる方がいい」などと言われる。ヒロはシュウを連れて担任に「早稲田に行かせてあげてほしい」と頭を下げる。戸惑いながらもシュウは自分の本心に気づく。別れることが決まり、放課後のグラウンドでヒロは大声を上げて泣く…。

はい!と言う訳でこの映画、あらすじを読んで気付いた方もいらっしゃるかもしれませんが、ヒロインのヒロ(これダジャレじゃないですよ)が彼氏に「東京に行かないでほしい」→「いや行ってほしい」→「いや行かないでほしい」ともがく。それだけの映画です!個人的に山場を多く求められるテレビドラマの脚本家が初めての映画でこのような緩急の少ない映画を製作するのが興味深いですが……話を戻すとこの映画、wikipediaにもある通り、役者によるアドリブで撮影されたシーンが多く、当時18歳だった北乃きいの瑞々しい、混じりけの無いもがきが全身で表現されています。その多くは劇中では超迷惑なものであり、川に飛び込むと脅したり、彼氏をいきなりストーカー呼ばわりしたり、車が故障した教師を放置して帰ってしまったりなどがあるんですが、全てが彼氏に対するもがきであり、この映画の魅力そのものであります。

そして、そんなカップルを諭すのが教師であり、劇中では成宮寛貴や大沢たかお演じる教師の説教シーンが出てきます。このシーンが案外多く、あとおそらく監督の思いも若干混じっているからかちょっと長く、冗長だったりします。ここがこの映画の欠点となっていると言うか、大人の説教そのものが全て悪とか「Don’t trust over 30」的な生き方を勧めているわけではないのですが、説教シーンによってこの映画全てが大人からのメタ視点になってしまっていると言うか、全力でもがいている北乃きいにどこか「ああ、若い時ってそういうことあるよね」みたいなノスタルジックな所に持って行こうとしている意図を感じてしまいました。

青春映画のクラシック「リンダ リンダ リンダ」で甲本雅裕演じる教師が「俺も昔は……」と語り始めようとした時、生徒に遮られるシーンがあります。あのシーンからは青春は、教師が導くものではなく、自分たちで作りますと言う意思を感じました。それと同じく、「ハルフウェイ」も北乃きいがもがくのは高校時代の思い出の1ページではなく、これからの人生においても続くもがきの一つであり、このblogで僕が何回も書いている、もがき続けることは青春であるのだと、そのような作りにしてほしかったなと少し思いました。

それでも、やはりこの映画における北乃きいのもがきの演技は素晴らしいものであり、100点満点で言えば300点だけど教師の説教シーンで30点減点で270点かなーとかその程度ですので、結果オススメです!


 

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