夢を求めて塩をつかむな、過去を捨てて現実をつかめ【マッドマックス 怒りのデス・ロード】


マッドマックス 怒りのデス・ロード」見てきました。

前提として私は過去のマッドマックスを見たことがなく、せいぜいメタルマックスシリーズが好きぐらいの知識量です。過去作品ネタは全く拾えてないと思います。

それをふまえて、というわけでもないですけど「マッドマックス 怒りのデス・ロード(以下デスロード)」は「過去との関わり方」が大きなテーマになっているのではないかなー…なんて思っています。

それを象徴するのが女戦士フュリオサです。フュリオサは弱者を暴力で支配するイモータン・ジョーの部下でしたが、ジョーの妻となることを強制されている女たちを連れ、自分が小さな頃に住んでいた「緑の土地」へ向かって逃げ出します。結果的に緑の土地は既に荒れ果て失われていたことがわかりますが、主人公マックスの助言によりあるかないかもわからない緑の土地を求めるよりも、自身と女達が囚われていた砦をジョーから奪い、支配を打破することを目指すようになります。

フュリオサは決して臆病な人間ではなく、強く勇敢な人間です。それでもフュリオサは過去に囚われています。失われた緑の土地で平和に暮らす夢を追いかけ、確証のないままに女達を連れて砦を離れる。もちろん正しいか間違っているかで言えば正しい行動ですが、それには現実的な検討が足りていません。とあるインタビューで監督はストーリー上の必然としてフェミニズムが要請された、ということを発言しています。過去、女達が虐げられてきた歴史に囚われ、それへの反動から実現できそうにない主張・行動を起こす女達…とまで言うと少し不用意な気がするので控えますが、いずれにしてもフュリオサが自分の心に抱いていた幻想から脱却し、自分達が生きる道を見つけるというストーリーが、デスロードの柱となっています。

主人公マックスについても同様です。作中でマックスの過去について具体的に触れている部分はあまりありません。マックス自身も多くを語りません。元警官だということ、家族を失っていること。あまり具体的ではありませんが、おそらくマックスが過去助けられなかったであろう少女がたびたび幻覚としてマックスの目の前にあらわれ、(3Dだとわりと怖い)マックスも自分の過去に囚われていることがわかります。作品を通してマックスはフュリオサと女達を助けますが、マックス自身が自分の過去と折り合いをつけた様子はありません。マックスはラストで砦のエレベーターに乗るフュリオサ達とは逆に、群衆に紛れてその姿を消します。この意味はまだハッキリとはわかりませんが、マックスが未だ自分の過去と決別できていないがために砦の支配者(これは悪い意味ではなく、フュリオサと同じ立場という意味です)になることを拒否したのかな…という感じです。難しいですが、実際のところあそこでエレベーターに乗るマックスは逆に不自然だとも思うので、マックスはまた自分を取り戻すための旅に出たのだと考えています。

ニュークスくん(声は中村悠一)はおもしろいキャラクターで、ビジュアルは完全にザコAなんですがかなり作劇上の重要な位置を占めています。ウォー・ボーイズと呼ばれるジョーの部下は全身白塗りに上半身裸、眼の周囲を黒く塗る坊主集団というパンチのきいたザコ集団なので、ニュークスくんも物語の途中までは個人として認識されていません。ニュークスくんがザコAから個人として認識される登場人物になるのが、岩山の谷を越えるシーンです。逃げるフュリオサを追う中で偶然にもマックスとフュリオサの車に追いつき、女達の衣装の切れ端を手に入れたニュークスくんはジョーから一緒に来るよう命令されます。ジョーと共に戦いに向かうことはウォー・ボーイズの誉れです(それは洗脳の結果なのですが)。まあニュークスくんはドジなのでフュリオサ殺害と女の奪還に失敗し、あっさりジョーから見放されますが、それが逆にニュークスくんをウォー・ボーイズやV8信仰や生まれ変わりの幻想から救ってくれるんですね。ストーリー上、谷を越えた地ではニュークスくんはウォー・ボーイズではなく人間として生きることを許されるようになります。終盤でフュリオサ達がまた谷を越えて砦に戻る際、ニュークスくんは自分の命を賭して谷を大型車で塞ぎ、敵の追跡を防ぎます。これもニュークスくんが谷の内側では人間として扱われないことの証左であり、ある意味では作劇上の都合で殺されてしまったキャラクターだとも言えるのではないでしょうか。ニュークスくんは結局戦いの中で死にましたが、ジョーの洗脳による生まれ変わりを信じて命を投げ出すような死ではなく、フュリオサ達を助けるために自らの意志で命を投げ出す、つまり誰かに操られる人間以下の存在として獣のように死ぬか、自らの気高い意志を持って人間として死ぬか、これがニュークスくんなりの過去と向き合った結果だと考えるのが自然な気がします。

主要人物がどのように自身の過去と向き合ったのか、という点を書いてきましたが、それを抜きにしてもデスロードはハイパーおもしろい映画です。トゲのついた車!ギターから火炎を放射するだけの係の人!同じく太鼓を叩くだけの人!彼らと大量のスピーカーを載せるだけの車!先端が爆発する棒!並走する敵の車にウォー・ボーイズをエントリーさせるための巨大メトロノーム!シフトレバー先端には当然のように骸骨!乳首いじり男爵!V8V8V8!それらがメチャメチャに混ざって砂漠をカッ飛ばす最高の暴力ムービーです。ぜひ。

かそりん(@kasorin_r


MOGAKUのTwitterアカウントをフォローするとタイムラインで簡単に更新情報を確認できます。レッツゴーMOGAKU。

かそりん

かそりん

趣味はマジック:ザ・ギャザリングと小説。好きなアニメはプリパラとマイリトルポニー。福島県から東京都に引っ越しました。
かそりん

Tags:
No Responses