田亀源五郎 -「弟の夫」

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ゲイアートの巨匠 [田亀源五郎]

初の一般誌連載作品!!

弟の結婚相手はカナダ人、

そして男だった

はとです。

ゲイアートの巨匠 田亀源五郎、初の一般誌連載作品。ということで月刊アクション 2014年11月号より連載が開始された漫画作品ですが、私は雑誌を購読していないため、そのアナウンスからひたすら待ちわびて先日ようやく発売された単行本の第1巻を入手することができました。

しかしいきなりゲイがどうだと話をし始めて一体何なんだという感じですね。田亀源五郎は80年代よりゲイ雑誌にて漫画、小説、イラストレーションなどの作品で活動している作家さんです。私も一部の作品しか存じ上げないのですが、その内容はエロティシズム、サディズム、マゾヒズム、フェティシズムを扱ったものであり、たいへん官能的で背徳的に描かれた作品が多く見受けられます。

そういった従来の禁断的ジャンルから離れ、媒体も一般誌であるということでしたから、一体どのような作品になるのだろう?と想像もし難かったのですが、これが実に普遍的な素晴らしさを持つものでした。

弥一と夏菜、父娘二人暮らしの家に、マイクと名乗る男がカナダからやって来た。
マイクは、弥一の死んだ双子の弟の結婚相手だった。「パパに双子の弟がいたの?」「男同士で結婚って出来るの?」。
幼い夏菜は突如現れたカナダ人の“おじさん”に大興奮。弥一と、“弟の夫”マイクの物語が始まる――。

「男同士で結婚できるの?」「どっちが旦那さんで、どっちが奥さんだったの?」異国の人間と触れ合ったこともない純粋な少女の問いかけに、マイクはわかりやすく丁寧に答えてくれます。一方で、一般的な成人男性である弥一もまた、同性愛者という未知なる存在に戸惑いを見せます。こういった異なる二者による受け止め方の違いの表現も、対比の仕方がわかりやすく絶妙です。そして登場人物がとにかく優しい。マイクに夏菜、それからなんだかんだと作中でマイクに抵抗感を覚えていた弥一にも温かみを感じます。話を通して、同性愛者そのものではなく、現代の家庭の在り方について真摯に向き合っている作品であることがすぐに察せられます。

IMG_9060ためになるゲイカルチャーのコラムがありがたい

物語としては特に大きなアクションがない中で話のテンポも良く田亀源五郎の漫画家としてのセンスを感じます。作中の描写をあえてひとつ取り上げさせていただくと、マイクに出会い触れ合うことで、弥一が弟の死を初めて実感し、初めて涙を流す場面があります。

「あいつがカナダで死んだって聞いても、なんか……全然実感がなくてさ」

「今までずっと泣けなかったけど…」

言いながら弥一が部屋の窓から見上げた先には、ピントがズレたように不自然にぼやけた満月と星空の様子が描かれているのです。

……なんと奥ゆかしく情緒のある描写でしょうか。泣いている様を見せずに聞かせずに、その涙を美しく表現する見せ方には震えますね。

IMG_9059一般向け作品なのでお話上無意味なサービスカットも挿入されます


ストーリーものとしてのドラマに発展するのか、日常的風景を描いていくのか、まだ1巻目ではなんともいえない状況ですが、今後どう転ぶにせよ非常に期待を抱いてしまう出来であることには違いありません。エロティシズムやフェティシズムではない、田亀源五郎の持つ別側面の新たな魅力表現者としての技量が堪能でき、それまでの田亀作品を知らない方にも広く奨めたい、情操的で教育的な面を併せ持ったハートフルな作品です。

鳩田 誠司

鳩田 誠司

ヴィジュアル系バンドとガールズ・ラブ作品への嗜好に傾倒後、失業。近年労働に復帰しました。
鳩田 誠司

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