LocJam ― ゲーム翻訳JAMとは?

たとえば、いわゆる「インディーゲーム的」な特徴のひとつとして、「1~3時間程度の短時間で完走できる」という点が挙げられるかと思います(もちろん、全てに当てはまるわけではありませんが)。ノベルゲームであっても、全テキストがひとつのファイルにコンパクトに収まっているくらい、ということもあります。

この『LocJam』とは、海外のそういった「インディーゲーム」の1タイトルを題材として取り上げ、個人でゲームを翻訳してみよう、というコンペティションです。2014年春に第一回目が開催され、この2015年春に第二回目の開催が行われました。無料で誰でも参加でき、ゲーム翻訳という作業を体験できるイベントです。

『LocJam』では、審査がプロ部門とアマチュア部門の二つに分かれており、僕も昨年の第一回からアマチュア部門で参加していました。そして今回の第二回で、アマチュア部門の佳作に選んでいただきました。(今回選出された翻訳作品は、すべて『LocJam』のサイトでプレイ可能です。)

取り上げられるのは英語の作品で、日本語・(各言語)にローカライズを行っていきます。昨年度の題材としては、「Papers, Please」で有名な作者Lucas Pope氏の「Repabulia Times」が取り上げられました。

そして、今年度の題材となったゲームが、「Grandpa」というノベルゲームです。

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ティム・バートン的なホラー調とかわいさが混合したような特徴的なイラストとともに、広い屋敷の中でおじいさんが失くしてしまった帽子を一緒に探す、というアドベンチャーとなっています。
『LocJam』に参加すると、題材となるゲームでの翻訳対象となるテキストを提供してもらえます。「Grandpa」の場合も、昨年の「Repabulia Times」の場合も、全テキストがひとつのファイルに収まっていて、ワード数はそれぞれ1000程度。これは、プロの翻訳者ならば一日程度で仕上げる量だといわれています。『LocJam』では、そのファイルを一週間という期間を設け、それぞれ翻訳していきます。
またこのファイルは、「実際にゲーム内でテキストを埋め込む形式」で記述されている、いわばゲームの1機能そのものです。そのため文章のみが記載されているのではなく、ゲーム内で使用される変数などとともに書き連ねられています。

つまり、逆に言えばこのファイル内のテキストを英語から日本語に修正するだけで、実際にゲーム内で表示されるテキストも日本語に変わる、ということです。
この、「自分の文章を画面ですぐに確認できる」というところが大きなポイントです。

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実際に自分が入力したテキストが、画面上でどのような形で表示されるかを確認しながら作業を進めていくというこの工程(”LT”と呼ばれるようです)は、プロのゲーム翻訳者でもあまり行うことがないようです。プロが携わるような案件で規模が大きなものになってくると、テスト用の環境を構築するだけでも難しくなるでしょうから、当然といえば当然なのかもしれません。
その点、『LocJam』では参加時にテスト用の実行ファイルまで配布してもらえますので、それだけで実装→確認を繰り返していくことが可能です。これは、インディーゲームならでは、『LocJam』ならではの大きな特徴といえるでしょう。

海外のゲームをよくプレイされる方なら覚えがあるかもしれませんが、字幕ひとつでゲーム全体の雰囲気ってかなり変わってしまいますよね。文章の意味を翻訳して持ち運ぶだけでなく、キャラクターやシチュエーションのニュアンスまでをきれいな形で英語から日本語に持ち運ぼうとすると、これほど気を遣う作業になるのかと感嘆しました。
ただ単語と意味だけを注視して訳すのでは味気なくなってしまいますし、ときにはあえて意訳を組み込んで、コンテクストを生かしたままオリジナルの文章に再構築していくのが、翻訳の本質なのかもなと感じた次第です。

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参考:こだま分隊が山湖秘伝隊にめくら射撃するゲーム

また、「生のテキストファイル」からゲーム内すべてのテキストを翻訳するという作業のためには、文字通りゲームの隅から隅までを把握しなければなりません。
「Grandpa」も大ボリュームの作品ではありませんが、誰でもプレイのクセがあるので、普通にプレイヤーとして一度や二度プレイしただけではめぐり合うことがないようなテキストがきっと出てきます。
そういったテキストをすべて翻訳することは、ある意味、画面上でそのゲームを隅々までプレイし尽くすのとはまた違ったアプローチとして、ゲームに対して真摯に向き合い理解する行為といえるでしょう。

生のファイルからゲームの構成を知ることもできるので、ゲーム翻訳に興味がある人以外でも、ゲーム製作を考える人にとっても刺激的なチャレンジになるかと思います。

第三回も開催されるであろう『LocJam』、今後もさらなる盛り上がりに期待ですね。

ゲーム翻訳JAM『LocJam』:10ガッチ!


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