ラブソングにおける自意識について


日曜担当のmaezonoです。先週のエントリが音楽の歌詞についてだったので今週も歌詞について書きます。

「2014年のJ-POPで最も素晴らしい曲は何か?」という質問があった場合、迷わずうどん兄弟の「立入禁止」を選びます。

この曲の素晴らしさは箇条書きにすると200個くらいあるんですが、まあ今日は歌詞についてということで、1つだけ挙げると、「何も起きていない」んですね。

足元の小石を思い切り蹴飛ばしたいけどやめた 白い靴だし

この歌詞だけでもグッと来ると言うか、つまり好きな人に他に恋人がいるんですけど、それに対して、少し悲しんでみる仕草をする程度で何も起こらない!そこに自意識のもがきがあるのみ、つまりこれ僕がMOGAKUで何度も言っている通り、もがいて、相手に対して何もしない、白い靴だから小石を蹴るのをやめることが「青春」なわけですよ。

で、今日はこういう「自意識系ラブソング」(私が勝手に作った概念です)をいくつか紹介したいと思います。

まずは1982年、松田聖子「制服」。もともとはシングルのB面曲だったのですがテレビで流れていることもあるのでご存じの方も多いでしょう。

四月からは都会に行ってしまうあなたに打ち明けたい気持ちが

でもこのままでいいの ただのクラスメイトだから

学校を卒業してもう会えないから気持ちを伝えたい、でも何もしない!「ただのクラスメイトだから」と自意識で納得させる。自意識系ラブソングのクラシックですね。

この卒業式自意識系ラブソングは90年代に入るとSMAPも取り入れています。1993年のシングル「ずっと 忘れない」。音源を貼りたかったのですがyoutubeに存在しなかったため、気になる方は「Smap Vest」等に収録されているので各々で手に入れるなりしてください!すみません!

君が「おはよう」って微笑む そんな制服姿も最後だね

友達のまま 君といた

ホントの気持ち 伝えずに過ごした日々を悔やんではいないさ

これも「制服」と同じく卒業式でもう会えないのに自意識で納得させるパターンですね。卒業式における自意識は男女共通ということですね。

この「自意識系ラブソング」、実は日本だけのものではなく、洋楽にもあります。1969年のJackson 5の「I Want You Back」。

わかりやすくするためにここではFolderによる日本語カバーを載せました。歌詞の大意はそこまで変わってはいません。

Oh Baby 最後のチャンス 言わなくちゃ 君へと

Od Daring 非常事態だよ 思い伝えよう

ここでは上記の「立入禁止」と同じく、好きな人に他に恋人にいる人のもがきなわけですね。「伝えよう」と決意しているんですが「I Want You Back」と叫ぶのみで具体的な行動が何も示されていない所は立派な自意識系ラブソングと言えましょう。

そして1981年、自意識系ラブソングのクラシックが誕生します。J. Geils Bandの「Centerfold」。邦題は「堕ちた天使」。CMで使用されてたりもしているので聴いたことがある方も多いのではないでしょうか。

こちら、全文引用したいくらいなんですが和訳がこちらのWebサイトで全文載せられているので是非読んでみてください。「Centerfold」というのは「袋とじ」みたいな意味で、この曲、学生時代に好きだった女性が袋とじのグラビアに載っていてめちゃめちゃショックだ!(以下昔の思い出と妄想が延々と歌われる)という歌詞がハッピーな曲調で唄われてわけですよ。やはりここでも何も起きていない!雑誌を読むのみ!

そして、時は経ち、極東の日本にとてつもない究極の自意識系ラブソングが誕生します。それが2010年、恵比寿マスカッツの「かわいい甲子園」です。

この曲、明らかにサビが「Centerfold」サンプリングですね。まず説明すると、テレビ東京に昔、「おねがい! マスカット」というAV女優やグラビアアイドルが出演している深夜番組があり、恵比寿マスカッツとは出演している彼女たちの総称なんですね。また、「かわいい甲子園」というのはその「おねがい! マスカット」内のコーナーであり、その喧騒を曲にしたのがこの曲と。

はい!!!!ここで1つの点が線に繋がったことにお気づきでしょうか。

もう一度説明します。「Centerfold」という昔好きだった女性がグラビアに載っている歌詞の曲があり、その曲を元ネタにしてグラビアアイドルやAV女優がテレビの番組を曲にしている。

つまり、「かわいい甲子園」は「Centerfold」目線だとその「袋とじ」そのものなんですよ!なぜなら出演しているのはグラビアアイドルやAV女優そのものなのだから!!「『おねがい! マスカット』をテレビで見て身悶えしている昔同じ学校だった男性」というわけですね、この曲は。自意識系ラブソングでありながら男性の自意識が「Centerfold」を元ネタとしていることで表していて具体的な歌詞では全く描かれていないという凄い曲ですよこれは。

最終的にはこじつけに近い形となっていますが、その自意識という点でJ-POPで歌詞を読むとより人間の心の機微みたいなものが見られるのではないでしょうか。


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過剰な自意識にもがく日本語曲DJ

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