ニューウェイブ好きは90年代のBUCK-TICKを聴け!

はとです。

今さら説明するまでもない日本のロックバンド、BUCK-TICK。 ……と言いたいところですが、90年代初頭あたりまでのシングル曲や最近のアニメ作品のタイアップ曲はともかく、ネームバリューがある割にその実態を知らない人も多いのではないでしょうか。

しかし、時期や作品によって作風が様々すぎてこれがBUCK-TICKだ!と言いがたく、人によっても好みがそれぞれですし(そして面倒なので)、音楽ジャンルで分類しフォーカスを当てるのではなく、あえて90年代のこのバンドに着目し「ニューウェイブ好きは90年代のBUCK-TICKを聴いてみてくださいよ」というテーマで、一時期のアルバム作品をリリース順に紹介させていただきます。

 


■darker than darkness -style 93 – (1993年作品)

m18808a0nqb80年代からそれまで充分すぎるキャリアを築いてきたBUCK-TICKが、次のフェーズへ移り圧倒的完成度を提示し始めた決定的作品といえばこれでしょう。 オリエンタルでデカダンスな本作は、ジャズ、ブルースといった音楽をダブやサイケの処理によって異様なポスト・パンクに仕上がっています。 何と言っても冒頭から放たれるレゲエ+メタルを標榜した「キラメキの中で…」が衝撃的。前作まではまだ名残のあったビートロックのイメージを完全に覆すダウナーなビート、ボーカルを妖しく彩るノイズ、ある種ダブの進化系です。独自のオルタナティブなダブ・ロックとしては2002年にNUMBER GIRLが発表した「NUM-HEAVYMETALIC」と近い解釈であると感じます。 前作までに垣間見れたノイズサウンドが本格的に導入され始めた開花的作品。


■Six Nine (1995年作品)

51Uo5oCGNWLインダストリアル、ラウド、ポスト・パンク、シューゲイザー、ダーク・アンビエント、グラム、インド音楽……ディスコグラフィの中でも収録楽曲数が一番多く音楽性もバラエティに富んでいるのですが、それらを巧みな音響効果でパッケージしむしろ異常な混沌さが作品の世界観を作り上げています。日本の90年代ラウド音楽として早い登場である点や、それも独自路線の正攻法でないミクスチャー型ラウド・ロックである点が興味深いですね。 BUCK-TICKを象徴するひとつの危うい不良性やドロドロとした血生臭さを持った最後の作品であるという印象もあります。 余談ですが、無断で逆再生させたコーランを使用しイスラム教関係の団体から抗議を受けたことで回収され、編集し再販されたのですが、青いジュエルケースがオリジナル盤、赤いジュエルケースが再発盤でございます。


■COSMOS (1996年作品)

41PR17PAPYL前々作の「die」や前作の「鼓動」などでもネオサイケ/シューゲイザーの流れを予感させていたのですが、その辺りのサウンドを一足飛びで全編ノイズまみれにした痛快作品。 ファンの間では”ポップ”であるという感想をよく目にし、確かにポップ性は特に高い方であると感じられますが、その本質はポップとノイズの対照的な要素の融合にあるでしょう。人気が高く往年のビート感が蘇った「Ash-ra」に至るまで容赦の無いノイズ処理がオリジナリティを与えます。特にシングル曲である「キャンディ」ではアルバム収録にあたり再ミックスされておりノイズ解釈による新たなシューゲイザーの形が提示されたと見ています。 Melt-Bananaのアヴァンギャルド方面のノイズとギターロック方面のノイズを上手く折衷したスタイルも連想させる画期的作品。


■SEXY STREAM LINER (1997年作品)

41WXQZ5XNXLついに自らの音楽の為のテクノロジーを手に入れた最新型サウンドという感じです。ほとんどプログラミングのドラム、サンプリングのようなギター、ともはや一言でいってテクノ音楽。 人力でテクノ・ロックを実現した92年の楽曲「MAD」からここへ辿り着いたことを思うと感慨深さがあります。ブレイクビーツ、ドラムンベース、エレクトロニカなど、確かに流行りの要素を取り入れてはいるのですが、安易にビッグビート(デジタル・ロック)に落とし込むのではなく、歌モノと電子音楽の同等比率な現代的テクノ歌謡であるのがBUCK-TICKらしいですね。 サウンド面は硬質なエレクトロニクスである一方、ダークメルヘンな世界観から生命力を注ぐ櫻井敦司のボーカルによる存在が本質的に大きく、ヤプーズでいうところの「切ったら血が出るテクノ」に近い作品ではないかという感触です。

 

本作の収録内容と、当時のレコード会社のアルバム未収録シングル作品を網羅したコンパイル的ベスト盤「97BT99」という謎のアルバムを買う方がお得かも知れません。そのままオリジナル・アルバム+disc2にシングル集、という構成です。


 

アルバムごとにその音楽性を変貌させているのは2015年現在に至るまで同様で、こと90年代においてはいずれも異ジャンルには違いないのですが、コンポーザーである今井寿のニューウェイブ的解釈が顕著で、また当時のミキシングによって妙に統一感があるのです。あまり演奏が達者なバンドではないながらも、それをはるかに凌駕するギミックセンスを打ち出しています。

ユニークで先鋭的、リバイバルでも紋切り型でもない真にニューウェイブな音楽を求めるならば、ぜひこれらのタイトルに触れてみてください。

鳩田 誠司

鳩田 誠司

ヴィジュアル系バンドとガールズ・ラブ作品への嗜好に傾倒後、失業。近年労働に復帰しました。
鳩田 誠司

No Responses