女子野球アニメといえば?そう、プリンセスナインです。

女性が野球をする、というフィクション作品は数少ないながらも昔からいくつか存在します。
代表格として水島新司『野球狂の詩』に登場する「水原勇気」でしょう。
映画では『プリティ・リーグ』、ゲームでは『ドキドキプリティリーグ』漫画『無敵のビーナス』が挙がるところでしょうか。

もっとも有名(勝手な印象)なものはメディアミックス作品として発表された『大正野球娘。』ですね。
野球描写の素晴らしさ以外にも大正時代の時代考証や女学生たちの切なくも瑞々しい立場の演出が、野球要素を抜きにしても個人的に最高のアニメのひとつとなっています。

しかし、アニメとして「女子野球」が題材に上がったのは大正野球娘。が初めてではありません。
大正野球娘。より以前に女子野球アニメとして制作され、そしてなにより大正野球娘。との共通点がいくつか存在するという意味で、今回紹介したいアニメがあるのです。

それが、1998年にNHK-BS2において放送された『プリンセスナイン 如月女子高野球部』です。

 

まず大正野球娘。もプリンセスナインも知らないよ、という人のために最初に共通点を提示しておきましょう。

  • 女子が男子に対して野球で挑戦
  • 男子側のライバルはヒロインと恋仲
  • 陸上部の娘を俊足目当てで連れてくる
  • 練習試合は年下の男の子と
  • 最後は負け(!)

そして異なるところは、大正野球娘。が少女たちの「少女性」にフォーカスした作品だったことに対し、プリンセスナインは完全に「スポ根もの」として制作されています。
最初に貼ったOP動画を見ていただければ分かる通りのケレン味あふれた演出が各所で見られます。
主人公のライバル、お嬢様テニス少女の氷室いずみ(cv.金月真美)が野球対決のためにバッティング練習をするのですが、そこでズタボロになる演出などはまさにスポ根の流れ。

20150512-1特訓はスポ根の基本です

ではいくつか共通点に触れていきましょう。
女子が野球に挑戦、これは言うまでもなく。しかしどう対抗していくのか、ここはやはり違います。むこうは大正、かたやこちらは現代野球です。大正野球娘。においては、「変化球」や「変則フォーム」などのいわば現代野球のシステムを大正時代に「発明する」というギミックにおいて女子と男子の差を埋めるという試みがなされています。

一方プリンセスナインにおいては、高校ということで中学生の大正野球娘。とはちがい力の差は歴然です。
プリンセスナインのキャラクターは大正野球娘。以上に個性的で、「特殊能力」持ちも多いうえに、作品自体の演出が「スポ根」となっているので多少の不合理性は勢いで飲み込まれます。「いんだよ細けえことは」ということです。
その演出の最たるものはやはり「魔球イナズマボール」でしょう。これも詳しくは作中では説明はなく、”なんだかすごいボール“程度です。逆境ナインの「男球」のほうがまだ説明があるくらいです。でもそもそもそういうことを気にするアニメではありません。

そしてライバルとヒロインが恋仲、という展開。これも主人公が女性ということならではのギミックかもしれません。
大正野球娘。においてはそもそもの動機が小笠原晶子さんが男尊女卑の許嫁を見返すために野球に挑戦という流れです。
プリンセスナインでは、主人公早川涼(cv.長沢美樹)、ライバルでありチームメイト氷室いずみと、その幼なじみで姉妹校の如月高校野球部に所属する高杉宏樹(cv.子安武人)の間の三角関係がストーリーのひとつのキモになってきます。
ストーリー後半ではこの三角関係がドロッドロになっていくのですが、この後半部が個人的にはあまり好きにはなれませんでした。というのもちょっとケレン味が効きすぎてギャグ寸前になってしまっていたことと、物語のテンポが悪くなってしまっていたのでは?という疑問からです。

20150512-324話より。いずみと高杉のキスを目撃からの……

20150512-4白目演出!劇伴もシリアスです。だからこそのギャグ感

 

陸上部の人間を連れてくる、というプロットはこれは女子野球と限定せずとも、部員集めから始まる野球作品においてはある程度定番かもしれませんね。

練習試合が年下の男の子と。これはまさに女子野球作品ならではの共通点といえるでしょう。
大正野球娘。では小学生と、プリンセスナインでは中学生と練習試合です。いちおうどちらもフィクションとはいえ現実的なラインも取り入れて、というところなのかもしれません。

そして最大の共通点、最後は負けるということです。
これ本当にネタバレになっているのでどうなのと思うのですが、どうせプリンセスナイン見ないだろお前ら!という気持ちで書きます。
小説アニメマンガはそれぞれキャラデザや途中のストーリー、作風が異なる大正野球娘。ですが、最後は負けます。
プリンセスナインもラスト、地方予選準決勝で高杉くん擁する如月高校と対戦し、敗れます。
やはりフィクションであっても野球で女が男に勝つのはむずかしいのでしょうか?

20150512-5大正野球娘。と違ってお色気作戦も仕掛けたりします

いえいえそんなことはありません。
大正野球娘。はアニメでは負けたところで終わりましたが、小説版大正野球娘。は負けたあとも刊行は続いており、まだ完結はしていません。はやく最新刊出してくれ!もう5年も待ってるぞ!
そしてプリンセスナインも、原作者としてはアニメが第一部でそのあとに続くストーリーの構想があったそうです。DVDBOXには「その後のストーリーが何らかの形で映像化されること」を願っているが、まず無理じゃなかろーか……

最終的には「勝つ」お話になるのではないでしょうか?しかし大正野球娘。は続刊の知らせなく、そしてプリンセスナインは自然消滅……悲しい世の中です。女子野球、現実でもなかなか厳しい立場ですが、フィクションにおいてもそれは変わらないのかもしれません。


最後にプリンセスナインについての私的な感想をつらつらと書いておくと、まずいちばんの見どころは何度も書いている通り、強烈なケレン味の強さです。98年作品にもかかわらず、その演出・ストーリーは70,80年代のスポ根アニメ真っ青というくらいのコッテコテの濃さです。これに関しては好き嫌い分かれるかもしれないなと思える個性です。
魅力的なキャラクターもオススメどころです。不良の陸上部娘聖良(氷上恭子)、アイドル志望の渡嘉敷陽湖(飯塚雅弓)、不思議娘東ユキ(川澄綾子)などキャストもなかなか豪華です。時代的にもキャラデザ的にもいわゆる「萌え」とは路線がズレるものの、題材が女の子である以上、愛らしく描かれています。特に矢島晶子演じる男勝りの土佐娘、堀田小春は良い。矢島晶子さんの可愛らしい方言演技が聞けるのは神霊狩とこのプリンセスナインだけ!

20150512-6「ウチをなめたらイカンぜよ!」(cv.矢島晶子)

しかし自分がいちばん気に入っているのは、ライバルキャラのお嬢様、氷室いずみです。
主人公の早川涼がどこか頼りないところが多く、活躍より思い悩んでいる部分ばかりが目立つのに対し、氷室いずみはつねに前向きでチームのピンチに颯爽と現れたりするカッコイイところが多いのです。主人公涼との対決シーンでも、涼の修行シーンは薄味なのに対し、いずみの特訓は最初の方に画像を上げたように厳しく描かれます。
10話の登場シーンではBGMでキャラソンも流れる完璧な演出です。キャストが金月真美さんということもあるかもしれませんね。
ですから、個人的にはほぼダブルヒロイン、いやもう氷室いずみが主人公を食っているんじゃないかと思えるくらいの印象です。

20150512-710話より。ヒーローはピンチに遅れて現れる!

プリンセスナイン、以前紹介した風人物語に比べるとずいぶん視聴難易度が低い作品となっています。つい最近まではバンダイビジュアルの配信でしか見る手段はなかったのですが、2015年2月になんとDVDBOXが発売!当然私は購入しています。
「あ~~マイナーな作品見てェ~~~~」というスノビズムな欲求がわきあがってきた際にはぜひこのプリンセスナインを選んでみてはいかがでしょうか?

プリンセスナイン公式サイト http://www.nifty.com/animefan/fanclb/pri9/
キャラクター紹介が充実してます。niftyサーバもろ出しなのが時代を感じて良いですね。

それでは、また。

20150512-8

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主にアニメとゲームとオカルト関連の記事を書きます。
チャームポイントはとびきりのSmileです。よろしくお願いします。
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