時代劇は、必殺です。

あ~、啓蒙したい! 啓蒙したいよぉ~!

こどもの日だし啓蒙させてくれ! 頼む!

いいか? 今から啓蒙するぞKEIMOU!

 

「時代劇」  「必殺」

そう聞いて皆さんは何を思い浮かべますか?

はい、『必殺仕事人』ですね。3月に『新必殺仕事人』のBDBOXが発売されました。必殺シリーズのBDBOX化は今作が初めてです。つまり、この『新必殺仕事人』が一番人気があるのでしょう。

http://www.shochiku.co.jp/hissatsu/ ※音楽が流れます。音量注意。

このサイトに流れるおなじみの音楽、ぼんやりと浮かび上がる藤田まこと、これこそ必殺仕事人のパブリックイメージです。必殺と言えば必殺仕事人、必殺仕事人と言えばラッパのBGMとぼんやり浮かぶ藤田まこと。

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パチンコのヒットもあいまって、みなさんのイメージはこんな感じですね。江戸の民がぼんやり暗闇に浮かんでます。

あのね、実はこれ、ガンダムに例えたら

「あ~ガンダムってあれでしょ? SEEDってやつでしょ? キラヤマトの出てくるやつ。知ってる知ってる」

みたいな感じなんですよ。まあ厳密には藤田まことはキラヤマトのポジションじゃないんですけど、まあそれは置いておくとして。

ちがうんだよ! そうじゃないんだ!

頼む! 必殺シリーズのことを俺に語らせてくれ!

“必殺”について啓蒙させてくれ!

必殺シリーズは、少年隊・東山紀之、TOKIO・松岡昌宏などのジャニーズアイドルがキャストをつとめた『必殺仕事人2009』で31作目になります。

『必殺仕事人』が登場したのはなんとシリーズ15作目です。31のちょうど真ん中あたりなんです。どう? 意外でしょ? 仕事人が出てくる前には14の作品があるのです。

仕事人以前の14作品(便宜上、前期必殺と呼びます)
それに加え
仕事人以降の17作品(こちらは後期必殺と呼びます)
合計で31作品。

これが必殺シリーズの全タイトルです。※今回は劇場版とTVSPについては数に含めません。あくまで連続TVドラマとしてのカウントです。

「仕事人」とタイトルがついている作品は10個もあります。

仕事人、ヒットしたんですね。中興の祖ってやつです。いま現在、実際に『必殺仕事人』はドラマを見たことがない人にも「あ~わかるわかる」と言わしめるほどの知名度になりました。

いかにして必殺は生まれたか、いかにして仕事人を看板にして流行らせたか。その話をします。

 

 

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’72年フジテレビの『木枯し紋次郎』が流行りました。大ヒットです。いままでの時代劇とは一線を画す内容です。退廃的で、薄汚い。人情とか世直しとかそんなのどうでもいい。そんな主人公はエポックメイキングでした。

 

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視聴率を取られてばかりじゃいられない。朝日放送は紋次郎スレイヤーとして『必殺仕掛人』を生み出しました。なにせスタッフが覇気に満ち溢れています。新しい時代劇を作りました。金をもらって人を殺す。一筋縄じゃない、明朗快活ではない感じです。闇の世界のプロフェッショナルというジャンルを確立させました。

 

ええ、そうです。必殺は紋次郎に勝ちました。天下を取ったのです。

 

さてここで話はうつります。時代劇長寿シリーズの傾向です。

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これは時代劇専門チャンネルの『大岡越前』特設ページのTOP画像なんですが、お分かりいただけるでしょうか? そうなんですね。長寿番組には普遍性というものが大事なんです。結果、『大岡越前』は29年もつづく番組なりました。

そもそも時代劇というのはマンネリズムによって成立している部分が大きいです。水戸黄門でも暴れん坊将軍でも大岡越前でも、シリーズを重ねてもそのフォーマットはいつも同じです。これが視聴者の安心感を生み、長期に渡ってシリーズが続く大事な要素になるんですね。

「いつもの感じ」

これが長寿番組には大事なんです。

もし水戸黄門、暴れん坊将軍、大岡越前がシリーズを重ねるごとに作風を変えていたら視聴者は戸惑い、離れていき、やがて番組は終了すると思います。

「水戸黄門の666部はダメだよな~。なんせデーモン小暮が黄門様だもんな~。越後屋、貴様も蝋人形にしてやろうか!の決め台詞も安直。しかも戦闘BGMに『翼の折れたエンジェル』のカヴァーを流すのはなんか逃げだよな」

あれ? ちょっとおもしろそうですね。今のはナシで。

 

 

とにかく、紋次郎を打倒し、王者になった必殺シリーズはこの長寿番組になりにくい性質を持っていたんですね。

いつもの登場人物でサザエさん時空を生き、悪人を成敗するような、そんなのんびりした世直し時代劇ではないのです。将軍と仲がいいとか、大名の家に生まれたとか、そういう後ろ盾もないただの犯罪者が主人公です。彼らはいずれ破滅するしかないのです。

必殺シリーズは勧善懲悪ファミリー路線に腰を落ち着けることなんてできないんですね。常に攻めの姿勢でやらなきゃダメなんです。その結果、攻めすぎました。

シリーズ14作目『翔べ!必殺うらごろし』です。

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男として生きることにした怪力の持ち主 若(和田アキ子)

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記憶喪失の元殺し屋 おばさん(市原悦子)

 

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大日如来を信仰するサイキック修験者 先生(中村敦夫)※画像左奥が先生

 

若、おばさん、先生は本名すら明らかになっていません。狂っています。

お金をもらい、死を以て晴らせぬ恨みを晴らす闇のプロフェッショナル。これが必殺シリーズの基本フォーマットなんですが、もうそれすらありません。

修験者である主人公一行が「この世の穢れを清める」と称し、テレポーテーションやエイリアンハンドシンドロームなどの怪奇現象に立ち会い、死者と交信し、悪人を白昼堂々追い掛け回し殺していきます。暗殺じゃありません。つぎつぎと悪人をポアしていきます。闇の仕事とか金なんか問題じゃありません。怒りだけを原動力にしたプリミティブな暴力です。

ただ、色モノ路線としても知名度が高いうらごろしですが、脚本を見ると実によくできているんですね。

 

時代劇はどこから見ても変わらずおもしろい、金太郎アメのような日常ものと、ストーリーが進行していく大河仕立てのものがあります。

前者、金太郎アメタイプがTV時代劇のほとんどです。必殺もしかりです。前後の回とあんまり関係ないストーリーが展開されていきます。

うらごろしはめずらしく、記憶喪失になった殺し屋・おばさん(市原悦子)が生き別れた子どもと自分の記憶を取り戻していくメインストーリーが巧妙に隠され、存在します。ドラマは一話完結の金太郎アメ系に見えるのですが、どれも親子に関する話です。これがまたあばさんの過去が明らかになっていく最終回にむけてのカタルシスを蓄積していくんですね。

 

 

それはそれとして、うらごろしは当時流行ったオカルト要素を入れたり、登場人物の顔が怖かったり、今までのフォーマットを使わなかったために、歴代で最低の視聴率をたたき出してしまいました。かわいそう。視聴者が付いていけなかったんですね。

 

そうして、視聴率の落ちた必殺シリーズを立て直すために次回作『必殺仕事人』は作られました。スポンサーから「次で結果出せなかったら必殺シリーズ打ち切りね」と言われ「わかりました! とんがってない、いつもの感じでやります!」となったわけです。

 

その結果、仕事人は大ヒットしました。あとはこの状況を維持するだけです。いつもの感じでやるだけです。守りに入りました。でも、本当は「いつもの感じ」なんてできっこなかったんですね。モルヒネを打ってその場は取り繕ったけど、あとはもう死に体です。死体をひもで動かして腹話術よろしく「僕はまだ元気だよぉ~」とやってるような感じです。

非・仕事人シリーズも作りました。前期のようなハードな路線に回帰を試みたりもしましたが、仕事人のファン層はついていけませんでした。

「いつもの必殺仕事人に戻して!」

これに屈した結果、どうにもならない作品が乱発されました。そんなに面白くないんです。打率は落ちました。グダグダです。結局ドル箱は仕事人シリーズなんで日和るしかありません。

ガンダムの新作でアナザーやるけどやっぱり売り上げが心配だから、同時進行で宇宙世紀ガンダムのOVAをやるような感じです。そのうちアナザーガンダムも日和って今までヒットした宇宙世紀ガンダムのフォーマットに似せてきちゃうような感じです。毎度おなじみジオン残党が挙兵したり、ご存知シャア・アズナブルのそっくりさんが出てくる感じです。あとはSEEDみたいな、ヒットした1stガンダムをなぞったり21世紀ガンダムのスタンダードを目指したり、王道復古を強く意識したり、それに近いです。

 

 

必殺仕事人は後期になって打ち切り続き、必殺シリーズは末期になりました。

とんがっている作品をファミリー向けにデチューンして視聴率を出そうなんて、どだい無理な話だったのです。

とうとう「じゃ、次でもう必殺シリーズ終わりだから」という死刑宣告が下りました。そこで作られたのが『必殺剣劇人』でした。

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大ガマのハリボテに、歌舞伎役者のような衣装のキャストが乗っていますね。大ガマの忍法なんてのは、もうずっと歌舞伎のころからの伝統みたいなもので、自来也の使う妖術です。

「もうシリーズ終わるし、俺たちの好きだった時代劇やっちゃおうぜ」とスタッフが童心にかえって作ったのが剣劇人です。これが遊び心満載の、非常にいい出来だったんですね。

「ジオン軍のMSはおもちゃ作る予定ないから自由にデザインしていいよ」と言われてデザインしたら、すごいものができちゃった、みたいな感じです。

 

剣劇人の4年後にまた仕事人が作られましたが、なんてことはない作品で続きませんでした。かくして’00年代にパチンコがヒットして『必殺仕事人2009』が作られるまで、必殺はTVから消えたのでした。

 

 

 

とまあ、さんざん仕事人以降の必殺を貶しましたが

「仕事人以外にも必殺はあるぞ! 前期必殺は面白いぞ!」

本当はこれが言いたかったんですね。

江戸で殺し屋が出会い、徒党を組み殺し屋稼業を営む。いがみ合っていた殺し屋同志はやがて打ち解けて日々の殺しに没頭する。しかし、そんな蜜月は誰かの死によって終わりを告げる。、チームは崩壊を迎え、ペーソスを漂わせながら男たちは江戸から脱出していく。もう日常は戻らない。

ハードボイルドです。これが前期必殺だとよく描けているんですね。

 

本当は「前期必殺はこんな感じでおもしろいんだよ!」と語りたかったのですが、長くなったので続きはまたいずれ……。

あ、そういや前期必殺は劇伴もイカしてるんですよ。

これなんか時代劇のBGMとは思えませんね。

火曜日担当 フィーバー吉崎

 

サクセス本田とフィーバー吉崎

サクセス本田とフィーバー吉崎

・火曜日担当
時代劇が大好きな無職のサクセス本田。
都内を徘徊する無職のフィーバー吉崎。
二人で一つ。
藤子不二雄のような共同アカウントです。
サクセス本田とフィーバー吉崎

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