ボンジュール鈴木 あるいは 鈴木にゃんこ

はとです。

今回は演奏、編曲からミキシング、マスタリングまで自ら手掛ける、シンガー・ソングライターにしてマルチプレイヤーのボンジュール鈴木について。

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TVアニメ「ユリ熊嵐」のOPテーマを担当し一躍その名を轟かせたことで彼女の存在をはじめて知った人間は、僕に限らず数多といることでしょう。
当楽曲「あの森で待ってる」―教会を思わせる鐘の音に導かれて流れる、深いリバーブに漬け込まれた繊細なコーラス……イントロを耳にしただけで強い印象を残しました。

先ごろリリースされたフルアルバムのダイジェスト版が公開されているので、紹介としてはそちらを聴いていただければ手っ取り早いでしょう。アルバム収録曲「甘い声でちくってして」 のMVも同時に公開されています。

「さよなら。また来世で」digest

ひたすら豚、ひたすらかわいい

「甘い声でちくってして」

“例のプール”……

この方のことを調べようとしたところ、当時はプロフィールが殆ど見かけられませんでしたが、ユリ熊嵐の放送やアルバム発売に合わせて企画されたインタビューなどで徐々にその姿を現してきました(現時点においても未だにベールに包まれているところは大きいですが)。
性別からして憶測が飛び交っていたようで、聴けばわかるとおり楽曲のボーカルは女性の声なのですが、それが男性の声を加工したものだとか、そもそも別に女性シンガーを擁したコンポーザーの立場なのか、とか。
実際にはそのまま、自身で制作した曲を歌う女性なのだということが、本人のTwitterアカウントやインタビューにおいてむしろ切実な訴えが見られます。
ボンジュール鈴木という名は、その名義を決めなければならなかった場面でとっさに思い出したau revoir Simone(さよならシモーヌ)を参考にしたようです。友人にも紹介できず少し後悔していて、今なら鈴木にゃんこにしたいそうですが。

その音楽性の実態は、チルウェイブ、アブストラクト・ヒップホップ、ドリーム・ポップ、アンビエントなど多くの要素を包含し、歌唱スタイルとしてはウィスパーボイスによるラップ、ポエトリーリーディングを駆使したユニークさを持っています。そして歌詞の中の少女は常に被虐性愛に満ちている……。
作品の一部分に触れてその耳触りは刺がなく甘味のあるものですが、その全体像を見れば、ドラッグに起因する夢見心地のような、毒のある甘美さに感じられます。

スクリーンショット 2015-05-03 0.31.34作品と密接な性癖が伺えます

音楽的背景としては、幼少のころよりピアノを習いながら親しんできたクラシック音楽、そしてフランス、アイスランドの音楽がバックグラウンドにあるようです。ポスト・ロックの感触もあると思えば案の定、Sigur Rosの名前も挙げていますね。
歌うことの原点にロリータ時代のヴァネッサ・パラディ、楽曲スタイルの影響にウィスパーなポエトリーを導入したフランソワーズ・アルディの「Comment te dire adieu」をそれぞれ挙げています。
Twitterにて彼女が紹介した楽曲はいずれも戸川純がカバーしているというのが少し興味深いですが、趣味やルーツの通ずるところがあるのかもしれません。

Vanessa Paradis – Joe Le Taxi

Francoise Hardy – Comment te dire adieu (さよならを教えて)

歌唱スタイルから、日本のソロ・シンガーにおいてカヒミ・カリィ、Charaなどが引き合いに出されそうですが、トラックや歌唱に関してクラシック音楽から欧州の大衆音楽を背景に持ちながら、意図して用いられた日本の音楽由来の旋律は、同系統ジャンルの音楽家と一線を画す決定的要素と言えるでしょう。童謡やジブリの音楽(久石譲)も好んでいるということ、またピアノの他に習っていた箏によって、日本のメロディを学んだのではないかと本人は自己分析しており、納得がいきます。


初めてのワンマンライブに向けて「生身の私じゃなくて、映画を観ているような雰囲気を出せたらいいな」と彼女は述べています。
昨今の表現者には、受け手に身近な存在であろうとし、”リアルさ”や”等身大の自分”であることが常に正義であるかような風潮を感じます。対照的に彼女からは、その素顔を露わにせずエンターテイナーとして振る舞おうとする徹底したスタンスが見られ、そこに惹かれます。

幻想的なノスタルジーと濃厚で甘美な世界観を表現するアブストラクトなトラックとウィスパーなラップ、ポエトリー……すでに確信的に完成されている表現スタイルを、あるいは更なる変貌を遂げるのか、彼女の活動を追っていきたいです。

参考:
・音楽ナタリー – ボンジュール鈴木「さよなら。また来世で」インタビュー
・OTOTOY -「やっと会えたね」――対面インタヴュー実現! ボンジュール鈴木、待望の1stフル・アルバム『さよなら。また来世で』ハイレゾ配信
・OTOTOY – 気になるあの娘、ボンジュール鈴木とLINEしてみた

 

鳩田 誠司

鳩田 誠司

ヴィジュアル系バンドとガールズ・ラブ作品への嗜好に傾倒後、失業。近年労働に復帰しました。
鳩田 誠司

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