初めてのニケツと、アニメ『風人物語』のこと

先日、知り合いの125ccバイクに乗せてもらった。人生で初めてのニケツだ。
ここ最近都内を自転車で乗り回してはいるものの、バイクの速度は未体験ゾーン。
最初こそビビっていたけども、慣れてくると生身で風を切って疾走する感覚が気持ち良い。乗っている最中に、この感覚、どこかで同じようなことを見かけたことがあるなぁと思っていた。

そう、アニメ『風人物語』第九話「父のオートバイ」だ。
“なんにもしてないのに、むき出しの自分が地上スレスレにドンドン前に進んでいく感じ”
とは父のオートバイに乗った主人公ナオの感想だけど、本当にこれだなと。

ということで、気に入っているアニメ『風人物語』とからめていろいろ思ったことを書いた。

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『風人物語』は2004年にProduction I.Gが制作した衛星放送向けのアニメで、自分は当時偶然ファミリー劇場で見た。
監督は西村純二。音楽は川井憲次。美術が小林七郎。監修:押井守で、ときおり大平晋也の超絶作画も見られたりするのでスタッフはかなり豪華だ。
荒川真嗣担当のキャラクターデザインもデフォルメがかなり効いた独特なものながら、表情豊かでかつアニメとしての楽しさを感じさせてくれ、さらにどこか色気を感じさせるデザインになっている。

中学二年生、部員二人だけのデジカメ部部長のナオ。彼女が撮るのは空の写真ばかり。雲を撮っているだけではない、風を一緒に撮っている、という。いつものように屋上で空の写真を撮っていると、空を飛ぶネコたちを目撃する。ナオは驚いて屋上から落ちてしまうが、突如巻き起こった風によってふわりと浮き、怪我は免れる。
同じく空飛ぶネコを目撃したという同級生の涼子。涼子によるとネコに空をとぶことを教え、そしてナオを助けるために風を操ったのは、「風使いの里」出身という大気先生だという。ナオと友人のミキ、そして幼なじみの潤は風の使い方を習いに行くため、大気先生の故郷に向かう……

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というのがだいたい1話のまとめ。
そして2話でナオたちが「風を操る」のにまず必要なこととして習うもの、それは「自分の胸のなかに風を起こす」ということだ。
風を操れるようになったあとも、これは風人物語の大きなテーマとなる。

“等身大の中学生が抱える悩みや問題を描いた”と公式サイトで紹介されているように、風人物語は中学二年生ナオたちの「今、ここ」を描いている。
将来を考えるということ、今自分のやりたいこととは、おとなになるということ。そんなこと実感がわかないからよくわからない……
でも登場人物たちはうじうじ悩んだりしない。軽やかに「今、ここ」を駆け抜ける。

「今走らなきゃいつ走るのよ、ほら早く!」(第3話)
「できるかな、とか言ってる場合じゃないんだよ、私!」(第6話)
「私には、私らしい好きなことがあるんだ」(第11話)

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もちろん若者のことだけではない。大人だって心のなかに風を起こすことはできる、そういう気持ちのいい話もある。

冒頭に書いた9話「父のオートバイ」は父が突然バイクの免許をとってバイクとともに帰ってくるというストーリー。
父の挑戦ってやつかな、ととぼけるナオの父。呆れる母。
しかし事故もあり、一時はバイクに乗るのをやめようかと考える父だが、まだほんとうにやりたかったことをやっていなかった、このままでは終われないと気づく。
そして妻を説得する。「おれのバイクに、乗らないか」
結局、オチとしては後ろに乗った母が「お父さんの運転が下手くそ」と言って「今度は自分で免許をとって一緒に走る」と言い出すのだけど、これも父の挑戦が母の心に風を起こしたのだ。

「お父さんだってまだまだいろんなことが新しく始められるってことだよ」(9話)

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第4話では人に飼われていたことで飛び方を忘れた野良ムササビに飛び方を教えるストーリーが見られる。
ほんとうは飛べるのに、飛べない。風を使って教えてあげるわけだけども、ここに風人物語に通底するテーマがわかりやすく提示されている。大人たちも子どもたちも、心に風を起こすことができるのに、そのやり方を忘れてしまっただけなのかもしれない。

「私たちが飛べないから、よけいに飛べる動物に飛んで欲しいって思ったんじゃないの」(4話)

何かに感動する。なにかを一生懸命やってみる。誰かが一生懸命になにかをしているところを見る。もしくは誰かに恋をする。すると、心のなかに風が起こる。
登場人物の多くは風を使えるわけではない、しかし誰しもがその心に風を感じることができる。心に風を起こすことができる。風は目に見えないものだ。だからこそ、ナオは写真を撮るのかもしれない。写真に風と、その瞬間の思いを写しだすだめに。そしてそのときの自分を確かめるために。

「おばあちゃんになったとき、桜を見て思い出せるようにね」(12話)

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さわやかな良い話、というところにばかりフォーカスしたものになったが、個人的に登場人物のなかで一番好きな「雪緒」は、風使いの里に住む大気先生の亡くなった兄の未亡人という設定のキャラクターで、他のキャラとは明らかに異質な「陰」を持っている。2話や最終話で行われる大気先生との会話シーンは風人物語のしっとりとした魅力を存分に引き出してくれる屈指の演出が見られるので、そういった面もあるよ、といったことも最後に一つ付け加えておきたい。

この記事読んでもたぶん99%のひとはこのアニメ見ないだろうなと思ったのでけっこうあらすじとかガンガン書いたけど、風人物語が持つクオリティというのはそれで失われるものではないので、あまり問題はないかなと思っている。
いくつか挿入した劇中カットからもわかるように、風の表現、陽の光、自然風景もほぼすべて手書きで行われており、かなり挑戦的というか実験的と言っていいかもしれない画作りも作品の雰囲気作りに一役買っているポイントだと思うのでぜひ動いているところを見て欲しい。
とは言っても今現在見る方法がDVD買うか、フランス版のBOXを買ってPAL形式が見られる環境で見るか、もしくはゴニョゴニョするしかないのが残念ではある。しかし、ゴニョゴニョも少し探したけどぜんぜん見つからないぞ……どうなっとるんだ……
ちなみに自分が持ってるのはフランス版。レンタル落ちが手に入ればそっちにしたい。


ちなみに次の日、乗せてもらうの初めてで緊張していたせいか、脚がめちゃめちゃ筋肉痛になった。

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主にアニメとゲームとオカルト関連の記事を書きます。
チャームポイントはとびきりのSmileです。よろしくお願いします。
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