Ori and the Blind Forest ― 「全部オレが悪い」という気持ちよさ

というわけでtenkyoです。
今回は『Ori and the Blind Forest(オリとくらやみの森)』というゲームについて触れたいと思います。

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『Ori and the Blind Forest』は、15年3月11日にリリースされた、Moon Studios開発のタイトルです。リリース後わずか一週間で予算を回収というほどのヒットとなり、パブリッシャーのマイクロソフトも大喜びだったことでしょう。(Celebrated Xbox One Game Ori and the Blind Forest Profitable in One Week

現在はPC、XboxOneでリリースされているタイトルですが、まもなくXbox360でのリリースもされる予定となっていますので、続編の可能性も含めますます注目が集まるタイトルです。

開発自体は2011年から四年にわたって、Unityで続けられていたそう。
2011年の開発最初期には、わずか二人のメンバーが開発にあたるだけの小規模なものでしたが、プロジェクトとして力を入れるにあたり、Unityに完全移行したようです(Unity Focus: Making Ori and the Blind Forest)。当初『Ori』はXbox360向けに開発を進める予定だったようですが、その後XboxOneでのリリースが決まったりという中で、Unityでの開発でなければプラットフォーム間移行はできなかっただろうと感じているそうです。

60fpsでの動作を確保しつつ、フルHD2.5Dのアニメーションをプレイ中一切のローディング画面なしに制御する『Ori』というタイトルは、技術チームにとってもかなりチャレンジングな経験だったようですね。

『Ori』の、絵本がそのまま2.5Dの世界に落とし込まれたような空気感は『レジェンドオブマナ』を連想するような独特の雰囲気があります。また、強大な自然のなかで、一介のけものの姿をとった超自然的な存在を主人公としたアドベンチャーという意味では、僕にとっては『大神』を強く思い起こさせるタイトルです。

「The Iron Giant」や「Lion King」、さらにスタジオジブリの「もののけ姫(Princess Mononoke)」や「千と千尋の神隠し(Spirited Away)」からも影響を受けたという、その世界観表現のすばらしさは、このトレイラーを見れば一発でわかってしまうことなので、ことさら言うことはないのですが、ここではなぜ『Ori』がアクションゲームとしてすぐれているのか、その点において感じたことをまとめておきたいと思います。

まず、『Ori』のアクションの肝として、「打撃」というスキルがあります。「打撃」は敵オブジェクトや岩などのいくつかのオブジェクト、そしてほとんどすべての敵弾を踏み台にしてジャンプし、踏み台にしたものを反対方向に大きく蹴り飛ばすという特徴的なアクションです。「打撃」は攻撃としても使えるほか、パズルデザインとしても大きな意味を持つ、『Ori』の中核を成す要素といえます。

「打撃」による疾走感が、パルクール風のモーションと相俟って、動かすのがとにかく気持ちよく楽しい。「動かしていて楽しい」というのはハマれるか否かの大きなポイントですし、『Ori』においてはプレイヤーの「走りすぎ」による事故死を誘発させる要素にもなっていて、アクションの緊張感を増すという意味でも一役買っています。

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オリとくらやみの森

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オレとくらやみの森

『Ori』は「死にゲー」のジャンルに分類してよいでしょう。プレイヤーキャラのオリ自体は一撃死ではないですが、それに近い耐久値しか持っていません。そこにトゲ、毒沼、圧死トラップ、敵の飛び道具などプレイヤーを殺しに来るギミックが豊富で、一発目ではほとんど抜けられないだろういわゆる「初見殺し」も多く見られます。

こういったジャンプアクション――”メトロイド”や”キャッスルヴァニア”の精神を持つという点で「メトロイドヴァニア(Metroidvania)」と呼ぶようですが――の場合、一般的には「トラップを抜ける→チェックポイントに到達」という手順を繰り返していくものですが、これはステージクリアタイプのゲームの場合です。

『Ori』はステージ形式ではなく、箱庭タイプのゲームなので、プレイヤーは好きなようにマップを行き来することができます。さらに、前述の通りロード画面などによる画面の切り替わりが一切ないシームレスであるため、『Ori』は決まった位置のチェックポイントというものがほぼ存在しません。その代わり、「ソウルリンク」というシステムによって、プレイヤーがある程度自由にセーブポイントを設置することができます。

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自由にチェックポイントを置くことができるこの「ソウルリンク」、はじめはただの親切設計だと僕は感じていました。しかし、実際はこの「ソウルリンク」こそ、『Ori』が持つプレイ感の核のひとつであるといってよいでしょう。

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底の見えない崖、飛び降りる前にセーブするか否かは自由

すっかり昨今の過保護なゲームデザインに毒され、「オートセーブ慣れ」してしまっていた僕は、不注意で事故死してしまったときに驚きました。「マジで全然セーブされてねえぞ」と。時間にして数分ほどの戻りではありましたが、それはその間「チェックポイントを一度も置かなかった」という自分の選択が招いた結果です。そのとき僕は、「ソウルリンク」が親切なだけのシステムというよりは、プレイヤーに選択権を委ねて突き放すものだと気づいたのです。

「ソウルリンク」は、オリのエナジーセル(いわばMP)を消費して設置することができます。エナジーセルは同時にチャージショットなど攻撃手段として使用するものでもあるので、プレイヤーは常に「どこまで温存するか」「どこでセーブするか」を考えながら行動をする必要があります。チェックポイントの設置はプレイヤーの選択であり、プレイヤーの戦略の一つです。これは最近ではかえって珍しいゲーム的緊張感といえるかもしれません。

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オリとくらやみの森

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オレとくらなどの箱

そして「ソウルリンク」は同時に、プレイヤーがゲームに対して向けがちなストレスの受け皿にもなっています。たとえばこれが「オートセーブのチェックポイント」というシステムのゲームだったとして、プレイヤーがどこかのトラップでつまずいてしまった場合、同じ地点から同じ道筋を繰り返しチャレンジしなければなりません。

数回のジャンプの後に難しいトラップがあり、そこだけが越えられない……というシチュエーションはよくあるものですよね。その場合、プレイヤーはその前段までの数回のジャンプを延々と繰り返さなければなりません。その動作がいくら完璧になっていたとしても、最後の1トラップを越えられないばかりに、一度は越えられたはずのハードルを何度も繰り返し越えなければなりません。そのために、道中で常に完璧な動きを何度も繰り返さなければならないというプレッシャーもまた、やはりストレスの原因になってしまいます。

そういったストレスの原因が紛れもなく「プレイヤー自身のスキル不足」にあったとしても、その矛先は次第に変わっていくことがほとんどです。「ここにチェックポイントがあるのが悪い」「チェックポイントから出てすぐの位置に穴があるのが悪い」という形に責任が転嫁されていくことでしょう。

そして、あまりに長く同じ場所でスタックしてしまい、ストレスの矛先がゲーム自身に向かうようになると、プレイによって享受できる楽しさは目減りしていってしまいます。その場所をようやくクリアできたとしても、「先に進めるという喜び」よりも、「やっと苦痛から開放された」という気持ちのほうが勝ってしまうのです。

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オリとくらやみの森

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オレとくらしきの家

その意味において、「ソウルリンク」はゲームに対して向かいがちなストレスを分散させる重要な役割を持っているといえます。

ただのトゲだから、崖だからとナメた感じで飛び込んだ結果だいぶ前のチェックポイントまで戻されたり、難しいジャンプの直前で何度も同じチェックポイントからやり直させられたりしても、プレイヤーのストレスはゲームに対しては向かいません。なぜならば、その「チェックポイントの場所」を決定したのはすべて自分だからで、「全部オレが悪い」という結論に立ち返るのみだからです。

ゲームに対するストレスという余計なノイズを感じさせることなく、グラフィックや音楽や世界観に素直に没頭できるという点で、「ソウルリンク」はすぐれたシステムであるといえるでしょう。(僕が知らないだけだとは思いますが、”メトロイドヴァニア”的ゲームにおいて、こういった「ソウルリンク」的システムのゲームは多くあるのでしょうか? 他にも例があれば比較してみたいところです。)

ただ、そんな『Ori』においても、「ソウルリンク」が一切排除される瞬間があります。それは、気合の入ったアニメーション表現とともに展開される、いくつかの節目のシーンです。

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そこではシーンの最後まで一切立ち止まることができず、死んだらまた最初からやり直し、というオーソドックスなシステムに変わります。

アニメーションと音楽の制御を完全に作り込んで盛り上げてくるそういったいくつかの場面は、『Ori』において間違いなく屈指の感動的な瞬間なのですが、運悪く何度もスタックしてしまうとストレスの原因になりかねません。

完全に作り込まれたひとつながりのシーンだからこそ、最初から最後までワンストロークで駆け抜けて欲しいところなのだとは思います。プレイに慎重になりがちな『Ori』で、「立ち止まらず走り抜けなければならない」というプレッシャーもプレイ感にメリハリを与えてくれます。

しかし、僕のようにプレイヤースキルが低いあまり「ひとつながりのシーン」で必要以上にスタックしてしまい、スムーズに通り抜けられた場合の感動を目減りさせてしまうこともあるかもしれません。

プレイヤーに委ねるゲームという遊びであるがゆえに、プレイヤー自身が「デザイナーが意図した感動を最大値で享受できない」というのは、こういったリッチな表現を用いる”メトロイドヴァニア”的ゲームでのひとつのジレンマなのかもしれませんね。

ゲーム『Ori and the Blind Forest』:10ガッチ!

tenkyo
Twitter: @tensato1


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