Visual kei, 襲来……海外のヴィジュアル系バンド

日本のロックバンドによる海外への進出が目覚ましい昨今、中でも”ヴィジュアル系”を取り巻く状況は特殊であると考えます。

とはいえ昔から海外へ出るバンド自体は少なくなく、70年代まで遡ってみてもイギリス公演後に日本国内より先に評価されたサディスティック・ミカ・バンドのようなバンドもいます。

しかしながら、ヴィジュアル系はその一つの大きなカテゴリーでもって広く支持を得ています。近年そこからダイレクトに影響を受けた海外のバンドたちが方方で着実に育ってきている点に着目し、今回は具体的にいくつかのバンドをまとめました。過去にTwitterで取り上げたバンドも多いので情報の整理という意味合いもあります。

基本的にこちらで紹介するのは、バイオグラフィにおいて“Visual kei”を自称している、あるいは実際にメディアにおいてそのように取り上げられているバンドとさせていただいています。


Jenlayn (ジェンレーン) – フィンランド

Jenlayn+The+band2011年結成
・Yura: Vocals
・Яed: Guitar
・Jae: Guitar
・OBI: Bass
・Jere: Drums

日本のテレビ番組でも”海外のヴィジュアル系”として紹介されたこともあるのでご存知の方も多いかも知れません。一見すると美麗なエモバンドのようで、実際にその素養も伺えますが、楽曲はDEAD ENDやLUNA SEAなどの系譜であると言えるでしょう。
定常のトーンではグラムな色気を持つボーカルも柔軟で、艷やかで太いクラシカルな歌唱やファルセットは近年のMORRIEやhydeを彷彿とさせますし、メタルコア系で用いられるような芯のある中音域のディストーションボイスには若い力が感じられます。
日本文化に対するリスペクトか、ボーカルのYuraによる合掌のアクションはユニークな味わいがあります。

Seven Steps

Alice


AKADO (アカーダ) – ロシア

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2001年結成
・Nikita Shein/Shatenew: Vocal, Guitar
・MioMi: Bass
・Kelly: Guitar
・Ghost: Drums
・Stinger: keyboard, programming

インダストリアルを絡めたミクスチャーメタルの様相ですが、時折みられるキーボードのフレーズやエフェクトからはニューウェイヴの趣味も垣間見られ、一筋縄ではいかないバックグラウンドとセンスを感じさせます。
コンセプトを含むトータル・コーディネートを務めるボーカルのNikitaのキャラクターの存在も大きいでしょう。女性的で繊細な声と低音を効かせ安定したデスボイスの巧みな使い分け(NARASAKI氏を彷彿とさせます)や、妖艶な容姿に惹きつけられます。インダストリアル・メタル方面の他、WaltariCoaltar Of The Deepersのヘヴィな楽曲とボーカルワークが好きな方にも奨めたいです。

Oxymoron No 2

Dirty Easter

バンド名のAkadoは漢字表記にすると「赤道」であるらしいのですが、これがもし「セキドウ」からの読み間違えだとしたら、大変萌えさせていただけます。

作品の方はありがたいことに、EPやシングルがiTunesやAmazonにてデータ販売されています。

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Oxymoron №2


紅-EVE-/Scarlet Eve – インドネシア

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2009年結成
・Hara Zelth: Vocals
・Giovanni: Guitar
・MYST: Guitar
・Sasa Chen: Drums
・Neita(Support member): Bass

素敵なバンド名ですね。元々は“Kurenai-EVE-“と読ませていたようです。
“Nox Erotica”という楽曲を聴き始めるとインド風(このバンドはインドネシアですが)の土着的フレーズを使ったメタルが流れ「どこがV系なのか・・・?」と疑念を抱いているところで転調しシンフォニックパートに突入。そこではたしかにX JAPANもといYOSHIKIの息吹を感じさせ、バンド名も意識させます。
東洋と西洋の対照的な音楽要素を織り交ぜるユニークさ持つ当楽曲は、辺境プログレバンド愛好者にも奨めたい一作。
バイオグラフィを参照するとメンバーの影響元にDELUHIGalneryusDir en Greyなどの名前が挙げられているのを確認できます。

Nox Erotica


Shocker X/Shocker Stalin – アルゼンチン

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2006年結成
・Ban Lesage: Vocals
・Ka Thoren: Guitar
・Fisu: Bass
・Gayo: Drums

海外にも存在しております、女性ボーカルを擁したヴィジュアル系バンド。バンド名はShocker StalinShocker Xという変遷があるようです。
キレのあるスクリームを放ち中性的でスタイリッシュな美しさを持つボーカルのバン・ルサージュの華やかな存在感・・・に加えてどうしても視界に捉えてしまうのを回避できないキワモノな白塗りで不気味に口角を上げるドラマーのガヨー
ヴィジュアル系といえば曲中で「アイン・ツヴァイ・ドライ・フィーア」「アン・ドゥ・トロワ」などと欧州の言語でカウントする例が過去より散見されます。“US”という楽曲では「イチ……ニ……サン……」というフレーズが用いられており、これが彼らから日本へのある種のアンサーであるのではないかと考えます。

また特徴的な点として、ハードコアやオルタナを軸にしながら、アルゼンチンのバンドらしくタンゴが取り入れられています(“Tangocore”というタイトルの楽曲もあります)。そのタンゴの要素というのがまた日本人の耳には歌謡曲の趣を与えて一種のヴィジュアル系らしさを滲ませるものです。

US

With all my hate

SHOCKER+STALIN+Ban+Lesage

クールな出で立ち。よく見ると肩から腕にかけてTHE OTAKUなタトゥーが・・・チャーミング
(本人が公開した自室での写真では、背景に「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-」のイラストが複数飾られているのが確認できました)


Shizzura (シッズラ) – ドイツ

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2007年結成
・Karumo: Vocals/Guitar
・Kizashi: Guitar
・Yukko: Bass
・Tetsu: Drums

Boku No Kurai Mirai (僕の暗い未来)

こ、これは……ムック!!
ヴィジュアル系が海外に影響を与えるものとして、様々ではありますがゴシックやエログロな世界観、ビート・ロックやニューメタル……といったイメージがあるだけに、それらとかすらないタイプの土臭い情緒を持ってきているのが意外でした。そもそもムック自体が往年のフォーク/GSや歌謡曲をダイレクトに吸収しているので、”ヴィジュアル系”を介し広い意味で日本の音楽が海外へ運ばれたのだと考えると興味深いですね。
先述のSchoker X以上に日本語の占める割合が高いのも特徴で、日本人リスナーに違和感を与えることもあるかもしれませんが、音楽性に即していると思います。

実際にボーカルのKarumoがムックの曲を歌っているのが公開されています。気持ちよさそうです。

Vocalcover : Media no juusei [メディアの銃声] – MUCC


Pinku Jisatsu/ピンク自殺 – スペイン

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2005年結成
・Kaede: Vocals
・moni: Guitar
・Nue: Guitar
・yuu~ya: Bass
・Komori: Drums

出ましたピンク自殺・・・!レコーディング作品としてのクオリティは決して高くはないですが、オールドスクールなヴィジュアル系バンドとしてその再現性は非常に高いと見ています。音作り、インディーズライクな雑なシャウト、エログロな映像コンセプト、衣装やメイク、90年代後半を思わせるキャッチーなサビ……日本のヴィジュアル系をきちんと研究していることが随所から伺えます。この愛おしさ、日本のコアなV系マニアにも受け入れられることでしょう。

Chi no ike (血の池)


HR/HM、ハードコアパンク、ニューウェイブなどを消化してきた日本のヴィジュアル系。それがまた海外に伝わり逆輸入のような形、あるいは異なる解釈で産まれたものとしてフィードバックされるというのは、音楽のあり方として大変素敵なモデルだと思います。個人的にはすでに国内と国外のヴィジュアル系の音楽性を同一視してはいません。海外からはまた日本とは別に独自進化したフォーマットや新しい潮流が生まれることを期待していますし、可能性があると思います。
今回いくつかバンドをピックアップさせていただきましたが、まだ見ぬ魅力的なバンドはたくさん存在するでしょうし、これから現れてくるのでしょう。

あと言えることは、この手のガイジンはだいたいOTAKUだということですね。


下記は海外のヴィジュアル系バンドをコンセプトにしたコンピレーションです。今回紹介させていただいたバンドも何組か参加しています。

鳩田 誠司

鳩田 誠司

ヴィジュアル系バンドとガールズ・ラブ作品への嗜好に傾倒後、失業。近年労働に復帰しました。
鳩田 誠司

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